トヨタ自動車は6月18日、同社がテレマティクスサービスとして2002年より提供してきた『G-BOOK』を一新した新サービス『T-Conect(ティーコネクト)』を発表した。2014年夏以降に発売する対応カーナビの登場に合わせてサービスを開始する。
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◆ニュアンス社の音声認識エンジンを利用
T-Connectの通信サービスは、新開発の音声対話型「エージェント」、カーナビにアプリとして追加できる「Apps(アップス)」、従来のG-BOOKで実現していた安心安全サービスや情報サービスをまとめた「オンラインケア」から構成される。
「エージェント」で最大の特徴としているのが、ナビの目的地設定やニュースの検索、車両の説明などを、同乗者と話しているようなあいまいな音声コマンドで対応できる点。これは、スマホなどの回線やWi-Fi、DCM(車載通信機)などを使い、クラウド上にある「トヨタスマートセンター」と接続し、ここで処理されることで実現できるものだ。
ここで使われる音声認識システムは、音声認識ソフト「ドラゴンスピーチ」でも知られるニュアンスコミュニケーションズ社が開発したエンジンをベースにトヨタ用にアレンジしたもので、この利用により高精度な認識が可能になったという。
◆通り名や営業時間でも絞り込み可能
たとえば、「明治通り沿いのおソバ屋さんを探して?」と入力すると、“明治通り沿い”を絞り込み条件としてソバ屋をリストアップ。さらに「今やっている駐車場のある店」とすれば、ソバ屋を記憶しつつその中から駐車場や営業時間といったタグをもとにリストを絞り込む。これは、“通り名”と“駐車場”、“営業時間”を検索用タグとして活用することで実現したものだ。
これについて、T-Connectの説明に立ったトヨタ自動車常務役員で事業開発本部 IT・ITS本部 の友山茂樹氏は、「駐車場や営業時間等はすでに対応例があるが、通り名まで対応したのは初。トヨタの地図会社(トヨタマップマスター)との共同作業で実現した」と、この音声認識システムの開発に至る背景について語った。
もう一つ、この「エージェント」で魅力的と思われるのが「先読み情報サービス」だ。サーバーに蓄積された、いわゆるビッグデータを活用するもので、たとえば走行履歴やクルマの動きから行き先を予測して、そのルート上の自己や渋滞、天候、路面情報などを提供する。
たとえば「他の車両からアップされたスリップ情報(ABS作動情報)があると、それを注意喚起情報として他の車両へ提供できる(友山常務)」わけだ。さらにはこのサービスでは車両の燃料消費状況も判断して、給油が必要なタイミングを知らせたりもするという。
なお、この音声対話システムは「Smart G-BOOK」で用いられてきた自動音声対応サービスをベースに改良を加えたもので、対応はすべてロボットによって行われる。しかし、この対応がうまくいかない場合は、自動的に従来のG-BOOKでも提供されてきた有人オペレータサービスに転送され、ドライバーの要請を確実に対応できるようになるよう設定されている。これはSmart G-BOOKでも実現されていたものと同じ考え方によるものだ。
◆トヨタがSDKを配布、サードパーティがカーナビ上で動作するアプリを作れる
「Apps」はカーナビと連動するアプリをT-Connectナビにダウンロードして利用可能になるサービスで、独自に用意されたアプリストアには、「ドライブアシスト(運転支援)」、「インフォテイメント(情報&娯楽)」、「コミュニケーション(交流)」、「ライフサポート(暮らし)」の4分野に分けた形でさまざまなアプリが提供される。
また、このアプリの開発に当たっては、サードパーティが開発して提供できるためのオープンな開発環境「TOVA(Toyota Open Vehicle Architecture)」を用意。アプリ開発希望者にはソフトウェア開発キット(SDK:Software Development Kit)も提供され、トヨタの承認後、T-Connectアプリストアからユーザーへ提供される仕組みとなる。なお、有償アプリへの課金もこのアプリストア上で行えるという。
発表会場では、パナソニックが開発した車両側からエアコンのコントロールをクラウド上で管理できるアプリを紹介。実際にカーナビ上でアプリを起動し、エアコンのON/OFFが行われることをやってみせた。また、クラウド連携するアプリを利用する例として、「あいおいニッセイ同和損保」による、走行距離1キロ単位で保険料が計算される“実走行距離連動型”自動車保険の提供も、15年度よりサービス開始されることも明らかになった。
◆レクサスはG-Linkブランドを継続、中身はバージョンアップ
「オンラインケア」では、G-BOOKから引き続き緊急通報サービスや渋滞回避ルート案内、地図データ更新等のサービスが提供されるのに加え、Wi-Fiリンク機能を標準装備したことでスマホとの接続だけでなく、全国の「au Wi-Fiスポット」を介することでトヨタスマートセンターに接続を実現。地図データのダウンロードをはじめとする各種サービスを享受することが可能となる。
また、T-Connectは「スマートG-BOOKと同様、スマホを使って利用することも可能で、T-ConnectナビとT-Connectスマホアプリを組み合わせて利用することで、「マイカーログ」として燃費や、走行距離、目的地などの走行履歴データ等をスマホで管理することができる。その他、駐車場に着いてクルマを降りた後でも最終目的地まで徒歩ルート案内する「ラストワンマイル」も提供される。
なお、T-Connectのサービス利用料は永年無料。別売のDCM(車載通信機)を使う場合は通信料も含めて初年度無料で、2年目より1万2000円/年。また、レクサスで提供されてきた「G-Link」も内容が一新され、T-Connectに準じた『新G-Link』となり、通信料も含めて3年間無料で利用できる。
《レスポンス 会田肇》
「世界を変える」――ソフトバンクグループの代表 孫正義氏は、6月20日の株主総会でそう宣言した。
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孫氏は冒頭で「33」という数字を紹介する。これは自身が尊敬する坂本龍馬が亡くなったときの年齢だ。ソフトバンクも2014年で創業から33年を迎え、「坂本龍馬さんが成し遂げたことに比べると足元にも及ばない小さなものだが……」と話し、孫氏はソフトバンクの歩みを振り返った。
10年前(2003年)の株主総会で、孫氏は「営業利益で1兆円を突破したい」と豪語したが、当時は創業以来最大の赤字を出していたこともあり、「大ぼらを吹かせていただいた」と苦笑いする。その10年後の2014年に、ソフトバンクの営業利益は1兆円を超えた。「営業利益の1兆円突破は、日本ではまだ3社しか成し遂げていない。NTTグループは118年かかり、トヨタは65年かかった。ソフトバンクは最短の期間だ」と孫氏は胸を張る。
2014年3月期の決算説明会のときと同様に、孫氏は(Sprint、ウィルコム、イー・モバイルの業績を含めた)売上高、営業利益、純利益でNTTドコモを超えたこと、スマートフォンのパケット接続率と通話接続率で1位になったことなどを、あらためてアピールした。3.11の東日本大震災で通信インフラの重要性を痛感したことも振り返り、基地局を急ピッチで増設したことも強調した。
スマートフォンやタブレットのさらなる普及についても言及。リクルートライフスタイルが、ソフトバンクのiPadをメニューの注文取りやレジなどで使うために、2万店舗に導入した事例も紹介。「国内での携帯事業はこれ以上成長が見込めないのでは? という指摘を受けるが、私はまだ、スマートフォンやタブレットの利用は、ますます広がると考えている」と、法人需要への期待を語った。
●携帯電話と電気のセット販売も視野に
孫氏が「本業ではないけど」と言う発電事業も紹介。有害物質を(あまり)排出せずに発電ができる「クリーンエネルギー」の取り組みに触れ、米Bloom Energyの産業用燃料電池発電システム「bloomエナジーサーバー」を構成する1つのユニットを紹介。「このボックスで、日本の家2軒分の発電ができる。中はシリコンでできた板が入っていて、片方の面に都市ガスが流れ、裏側には酸素が流れる。通常は火力で発電をするが、これはガスを燃やして発電する。これはガスを燃やさず、音も臭いも煙も出さず、たいへんクリーンなエネルギーで発電する」と説明した。
また、2016年から電力の小売が自由化されることを受け、「いずれは携帯電話のサービスと、クリーンエネルギーで起こした電気のセット販売のようなものができるといいと考えている」と話していた。
●世界進出の第一歩に米国を選んだ理由
孫氏はこれまでの活動を振り返り、「情報革命をする上で、少しはお役に立てたのではないかと思う」と振り返る。そしてソフトバンクの34年目からは「情報革命の分野で世界を変える」ことを目標とする。その第一歩として米国に参入し、Sprintを子会社化したことは周知の通り。最初に米国を選んだ理由について「アメリカが経済的にもさまざまな面でも最も注目に値する国だから。少なくとも2050年にはGDPは日本の5倍くらいに伸びるだろうと言われている。人口も伸び続けている。どうせやるのであれば、人口もGDPも伸びる世界1位の米国に挑戦してみたい」と語った。
一方で米国の通信事業に目を向けると、LTEの通信速度は17カ国中16位と遅く、携帯電話の月額料金は日本よりも高い。孫氏はこうした現状を打破すべく「ノウハウと経験、情熱、技術を米国のスプリントに移植している最中」と話す。「これは1年や2年でできることではない。5~10年かかるような長いプロセスの仕事だと思っている」と根気強く取り組む姿勢を示した。「最終的には日本とアメリカで争っているという状況にしたい。そういう覚悟で参入すると、他社にもいい刺激を与えられると思っている」
●Pepperは「新しい大ぼら」を具現化したもの
孫氏が「新しい大ぼら」と話すのが「人とコンピューターの関わり方を変える」こと。それを具現化したのが、先日発表した、人間の感情が分かる人型ロボットの「Pepper」。Pepperは孫氏の隣で軽快な会話を繰り広げ、新たな特技(?)である「早口言葉」も披露した。孫氏は「Pepperは世界で初めて感情を持ったロボット。感情を表す言葉のすべては理解できないが、喜怒哀楽は理解できる。人間が作り出したロボットとしては、初めての転換期を迎える」と強調した。
このロボット事業も、孫氏は「世界を変える」ことにつながると考える。「今言うと大ぼらだが、少なくともビジョン、夢、覚悟がある。今日は私の覚悟のほどを直接、皆様にお伝えしたいと思った。どういう形であれ、道具であれ、人々の悲しみを減らし、喜びを少しでも大きくしたい。情報革命を通じて人の幸せを心から願っている」と話して締めくくった。
●質疑応答では株主から「世界を変える」提案も?
株主との質疑応答では、質問……というよりも要望や提案が多く挙がった。「外国人観光客が利用できる無料のWi-Fiスポットが少ない。2週間ほど無料で使えるサービスをお願いしたい」との要望には「やりましょう」と即答したが、「株主優待サービスで、iPadとPepperを優先的に購入したい」との要望には「検討しましょう」と苦笑い。「海外から送金できるソフトバンクマネーのようなものを作ってほしい」との要望には、「もともと金融と情報革命の相性はいいと思っていて、強い興味を持っている。グループ会社にも種があるので、近い将来に何らかの形で実現したい」と予告した。
「電子書籍に関する新規事業のプランがあります。これで世界を変える自信があります。5年以内に世界ナンバー1の電子書籍会社を作ります。ぜひ、5分でよろしいので、お時間をよろしくお願いします!」と訴える人がいたのも、ソフトバンクの株主総会ならではの光景かもしれない。
一方、「ソフトバンクのCMは、最近鼻について謙虚さに欠ける。CMを見るのがいやで、チャンネルを変えてしまう。もう少しお考えになられたら」と女性から厳しい(?)意見も。孫氏は「あまり『一番一番』と言ってはいけない。今、反省しました」と真摯(しんし)に受け止めていた。
「経営者を辞めた後の、人生の最終目標は?」との質問には、「60代で現役は退きたい。その後も健康なら、ソフトバンクアカデミアの校長として、思想を語り続けられればいい。あとは、もともと画家になりたかったので、世界中を旅して絵を描きたい。でも、今はソフトバンクのことで頭がいっぱいなので、引退した後のことまでは考えが及んでいない」と話していた。
アズジェントは6月19日、企業のネットワークを24時間体制で監視してサイバー攻撃などの危険な兆候をユーザーに通知する新サービス「セキュリティ・プラス マネージドセキュリティサービス for Deep Discovery Inspector」を開始した。サービス料金は月額41万円から。
新サービスではネットワーク上でセキュリティの脅威を解析するトレンドマイクロの「Deep Discovery Inspector(DDI)」を利用する。アズジェントのセキュリティ監視センターでDDIを遠隔で運用し、DDIなどでのログ解析からサイバー攻撃やネットワークへの不正侵入といった危険性の高いイベントが見つかった場合に、ユーザー企業にアラートや対策のアドバイスなどを行う。
自社で24時間のネットワーク監視やセキュリティ関連ログの分析、判断を行うには高度なノウハウや費用が必要となるため、アズジェントはサービスの利用で負担を軽減しつつ、セキュリティ対策を講じられると説明している。