NECは7月15日、Amazon Web Service(AWS)を利用したシステム構築サービスを開始した。2014年度にグループ全体でAWS認定技術者を200人体制に拡充し、2017年度末までに累計1000システムへのサービス提供を目標としている。
同サービスではAWSの大規模導入時や高負荷時の動作・性能評価を実施し、性能評価シミュレーションに基づいたシステム構成の作成やICT資源の調達を自動化する独自ツールによって、最適なシステム構成の導入・維持を実現するという。AWSに対応したNECの主要ミドルウェアを利用して、AWS上で付加価値の高いシステムを適切なコストで構築できるとしている。
また、NEC Cloud IaaSのセルフサービスポータルとの連携でAWSや顧客構築システムの監視、利用状況・構成情報などの統合管理が可能だという。
ソフトバンクグループの法人向けイベント「SoftBank World 2014」が7月15日・16日の2日間に渡り開催されている。初日にはグループ代表の孫正義氏による基調講演が開催された。
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「SoftBank World」は法人顧客向けにソフトバンクグループが取り組むビジネスの現況を紹介するイベントとして2012年に始まり、今年が第3回目の開催となる。会場では協賛企業によるモバイル、クラウド技術のサービス、ソリューションに関連する展示が行われるほか、多彩なテーマを取り扱うセッションも開催される。
イベントのオープニングを飾ったのは、孫正義氏による基調講演。「情報革命の舞台は、世界へ」と題したスピーチの中で孫氏は、低迷する日本経済を復活に導くためのソフトバンクのシナリオを熱弁した。
■企業はスマホ・タブレット・クラウドを100%揃えて情報武装すべき
講演の冒頭、孫氏はこのように述べた。「最近は日本の国の人々が自信をなくしているように感じる。特にビジネスの分野では“沈み行く国、日本”という文脈で語られることが多い。アベノミクスの効果によってようやく経済は復調の兆しも見られるが、GDPはかつての世界2位の地位から陥落しつつあり、新興国の労働人口が大きく伸びているのに対して、日本は減少している。ただ、私は日本はこのまま沈むことは決してないと信じているし、必ず復活する。またそうしていかなければならない。将来を憂うだけでなく、どのようにして“復活させるのか”、私なりの方程式を今日は表明したい」
孫氏は「日本経済の復活」を実現するためのキーポイントに2つの要素を挙げた。一つは「生産性の向上」と、もう一つが「労働人口の拡大」である。「この二つを実現することで、日本の競争力を取り戻すことができる」と孫氏は指摘する。
生産性を向上させるための鍵は「情報武装」にあると孫氏は続ける。「いま世界中でITテクノロジーが進化して、情報技術が拡大している。2018年にはCPUトランジスターの能力が人間の脳の処理能力を超えると言われている。他にもメモリー容量が増えて、通信速度が上がれば、情報のビックバンを加速度的に進化させることができる」
ITテクノロジーにおけるCPUの高速化、メモリー容量の拡大、通信速度の向上という3つの基本要素が「情報武装」のコアであると説く孫氏は、ソフトバンクとして特に通信の技術革新に貢献してきたことを強調する。現在市街地実験で下り最大1Gbpsの通信速度を実現したことについて触れながら、まもなく一般ユーザーのモバイル端末で使える技術になるだろうとした。
今後2010年から2040年にかけて、ムーアの法則に従ってITテクノロジーはさらに進化を遂げるという孫氏は「これからは無限大の計算能力、記憶容量、通信速度が当たり前の時代になり、人々のワークスタイル、ライフスタイルが変わっていくだろう。すべての情報がクラウドに格納され、人々のワークスタイルが決定的に変わっていく」とした。そして、「ソフトバンクでは変化に先行して対応するために、全社員が iPhoneと iPadを持ち、そしてクラウドにつながって業務内容を共有している」と強調しながら、「スマホ、タブレット、クラウドを100%揃えて情報武装しよう」と呼びかけた。
孫氏はさらに説明を続ける。「最先端テクノロジーが生産性の向上を実現するが、そのためには情報武装が必須だ。何か画期的で新しいものを皆が発明するひつようはない。既に発明されているツールを上手に活用すれば天下を取れる。有効なツールを世界で一番早く活用すれば、生産性を飛躍的に高められる。最先端の機器を買って、活用するだけでいい。まさに“いつやるのか、今でしょ”と言いたい」
ソフトバンクでは全社員を「情報武装」したことで、国内企業の成長が横ばいを続ける中で、社員一人あたりの生産性が倍増したという。クラウドの活用について孫氏は、ソフトバンクではビッグデータを経営に徹底活用しているとした。その一例として、ネットワーク接続率の向上施策について触れた孫氏は「電波改善のために500億レコードを獲得して、接続率を高めてきた。例えば地域別だけでなく機種別、時間帯別で細かく把握を把握しながら獲得したビッグデータを元にして、インテリジェントに問題を解決している。言わばネットワークの問題をピンポイントで探し当てて解決してきたことで、少ない資本ながらも他社を一気に引き離せた」と胸を張る。
ビッグデータ活用のビジネスプランにつては、今後米GE社との業務提携により車の走行管理システムへと拡大していく。世界中の乗用車や飛行機、トラクターなど業務用車両の走行・メンテナンス情報をビッグデータとして集めるためのセンサーを導入し、通信システムを構築してクラウドで解析する。「車両に関連する情報を可視化することで、適切なサービス提供とこれに関連するビジネスを活性化させ、引いてはドライバーの安全を守ることができる。このようなビッグデータ解析サービスを様々な企業に提供していきたい」と孫氏はビジョンを説明した。
■日本の労働人口の課題を解決する秘策は「ロボット」
日本経済の復活に必要なもう一つの要素となる「労働人口の拡大」について、孫氏はさらに持論を展開する。「もう一つの難しい問題が労働人口を増やすことだが、日本の労働人口はこのまま行けば減る一方。これを解決することはとても難しい。解決策はあるのだろうか。私は今日ここで嘘のようなほらを吹きたい。それは、テクノロジーの進化で労働人口問題も解決できるという話。具体的には“ロボット”だ」
現在の日本が抱える課題は、人口が少ないのに人件費が高いということ。これを解決する秘策が、ありとあらゆる用途に使える汎用型のロボットを一気に企業のものづくりの現場に普及させることだと孫氏は述べる。「現在1,000万人いるといわれている国内の製造業人口に、3人分働くことのできる産業用ロボットを3,000万台導入して製造業の人口に加えれば、日本の労働人口は1億人に増える。日本は世界最大の労働人口大国になれる。日本の労働賃金が高いと言われているが、多機能型の汎用型ロボットを100万円でつくることができれば、月額の人件費も世界最安になるだろう」
これからはロボットが単純労働を担うことで、人間は付加価値労働に集中ができて生産性も向上するだろうというのが孫氏の見方だ。さらにロボットがクラウドにつながり、人工知能を搭載することが大事だという孫氏は、先頃発表したパーソナルロボット「Pepper」を壇上に招いた。
孫氏は「これからは個人でもロボットが購入できる時代」だと強調しながら、パーソナル・ロボットの時代がやってくるとコメント。「人々の感情を認識できるロボットが、これから人間の様々な生活シーンでともに働く時代になるだろう。今から50年以内にはありとあらゆる生活シーンでロボットが活躍しているはず。ロボットに智恵を与えて、汎用的に活動できる能力を与えることで、日本はもう一度世界最先端の生産技術も手に入れられるだろう」
スピーチの壇上に立ったPepperは、動物の鳴き声でベートーベンの「第9」を演奏するアプリ「動物楽団」による演奏を披露。今後ソフトバンクではPepper向けのロボットアプリの開発にも力を入れていく。「9月にはPepperのデベロッパー向けカンファレンスを開催する。ロボットにどんな行為をさせたいか、読み聞かせやダンスのコーチングなど様々なアプリが増えてくるはず」(孫氏)
孫氏は壇上にて「結論として、日本は復活できる、復活してみせるという方程式を私はつくりあげられると信じている。みなさんと一緒に日本を元気にしたい」と述べ、スピーチを結んだ。
■アリババのマー氏は具体的なビジネス戦略については触れず
ソフトバンクが出資する中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングから、会長 兼 CEOのジャック・マー氏も、孫氏に続く基調講演に登壇した。
アリババ・グループが現在、米国株式市場での上場に備えていることもあり、マー氏からはこの日の講演で具体的なビジネスの話は出ることがなかった。代わりにマー氏は、起業からこれまで一貫して掲げてきたビジネス哲学を展開。「ビジネスは常に10年先を捉えながら、現在よりも将来はもっと良くなることを信じて進むことが大事。顧客の不満を解消できれば、自らのチャンスになる。すぐに行動を起こすことが一番大事だ」と述べながら、ビジネスの原点に立って顧客目線での経営を徹底することがビジネスの成功につながると強調した。
■「広告の民主化」をヤフーが牽引する
続いてヤフーの代表取締役社長である宮坂学氏が壇上に上がり、同社のWebを活用した最先端の情報ビジネスをアピールした。
宮坂氏はWebでの広告展開について、ユーザーの接触時間を長引かせることで販売チャンスを高めることが大事としながら、具体的にはテキスト情報に動画を効果的に加えることと、3Dデータの活用が活路になると説いた。さらに「ビッグデータを活用することで、今後はピンポイントでタイミング良く広告が打てるようになる。精度を上げながら顧客へ情報がリーチできるということは、中小規模の企業でも広告から大きな成果が得られるようになるということ」とし、「広告の民主化」が進むことでインターネット広告のメリットが高まると述べ、ヤフーがこれをリードしていくと宣言した。