
※この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
現在エグゼクティブ諸氏である当サイト読者の皆さまは、どういう人が社長あるいはその予備軍としてのリーダーとして活躍できるのかということに興味を持っていると思います。新刊『社長になる人の条件』ではトップリーダーをはじめ、リーダーと呼ばれる人たちが、どのような考え方・行動をとっているのかについてまとめました。
●経営者=エラい人という「状態」か、経営という「仕事」か
『ストーリーとしての競争戦略』著者、楠木健・一橋大学大学院教授の『経営センスの論理』(新潮新書)第1章で、こんな話が紹介されています。
「現場で何が起きているのか関心がなく、現場を自分の眼で見ることもない経営者。戦略づくりを経営企画スタッフに丸投げし、結果の数字を見ているだけの経営者。秘書が書いた原稿を一字一句読むだけのスピーチをする経営者。社員へのメッセージをスタッフに代筆させる経営者。(ファーストリテイリング社長の)柳井さんはこう言っている。『経営は意志。意志は言葉でしか伝わらない。人が書いた原稿を読み上げるだけの経営者がいるが、何を考えて経営しているのか、不思議としか言いようがない』。なぜこういう奇妙な経営者が出てくるのか。身も蓋もない話だが、端から経営という仕事をやるつもりがないというのが本当のところだろう。経営という『仕事』ではなく、経営者=エラい人というポジションにいるという『状態』、こっちの方が思い入れの対象になっている。商売や経営は他人事のごとし。(中略)それにしても、こういう経営者は何が楽しくて仕事をしているのだろう。意見を聞いてみたい。でも、聞いたところで、スタッフが代筆したコメントが返ってくるのが関の山だろう。」
まさに、です。経営者=エラい人というポジションにいる「状態」の経営者は、なかなかこれからリーダーとして生き延びることは難しくなっています。一方、経営という「仕事」を目指す人たちの可能性とチャンスは大きく拡がっています。本書は後者、経営という「仕事」を目指す皆さまのために書きました。
●社長に至る道の「難易度」は?
では、どのような道をたどれば、経営という「仕事」を担うトップリーダーになれるのでしょうか。
トップリーダーへと至る道は、大きく分けて次の3パターンに代表されます。
(1)在籍する企業の中で抜擢され、社長の地位につく道
(2)自身の能力・業績を評価され、どこかの企業のトップとして引き抜かれる道
(3)自身で会社を立ち上げる道
(1)の抜擢型で出世するという道ですが、これはまずは常に自身の携わる仕事で業績を上げ、その上でひとつ上のレベル、全社レベルでの貢献とインパクトを与えることで巡ってきます。
ソニー株式会社の取締役・代表執行役社長兼CEOの平井一夫さんは、中堅時代から社内政治には頓着せず、とにかく「事業をうまくいかせること」に徹してきた人物だと聞きます。4期連続で赤字だったゲーム事業の立て直しなどで実績を築き、2012年、下り調子になっていたテレビ事業の再建を目指すため、歴代最年少社長として抜擢されました。
平井さんのように抜擢されるためには、会社全体の方向性について一家言持ち、その遂行のために最善の行動をすることが求められます。これを突き詰めれば、社長になる前から「社長と同じような目線で会社や自分の行動を見る」ということになります。自分に与えられた業務だけを日々粛々とこなす……それはもちろん尊いことですが、それだけでは「一社員」から抜け出すことは不可能でしょう。
●引き抜かれる人は、「実績が外から見える」人
(2)の他社のトップとして引き抜かれる道ですが、これには、他社から見て「あの人がトップになることで、うちの会社にメリットがある」と思わせる必要があります。実績や力が「外から見える」必要があるのです。したがって、(1)よりも、より外から成果が分かりやすいこと、また、普遍的な成果を求められます。
これら(1)(2)の必要条件を端的にいえば、「社長力」ということになります。自分の手元のことだけを見て働き続ける一社員では、どちらの道も歩くことはできません。トップリーダーにふさわしい人というのは、すでにトップリーダーであるかのように、常に物事を見据えて行動することができる人なのです。
それでは、(3)はどうでしょうか。2000年前後から起業ブームが起こり、次々にベンチャー企業が立ち上がってきています。しかし、起業した会社を継続し、大きくするということについてはどうでしょうか。本当に難しいのは、ここなのです。このハードルを越えられずにつぶれていく会社というのも、とても多いのが現状です。
その理由のひとつには、ビジネスの永続性というものがまったく無視された組織であったということが挙げられるでしょう。時流に乗って1つ商品が当たったとしても、次の手が打てない。それだと、当然ながら会社の継続は危ぶまれます。
さらに、自分たちの手元でその事業をきちんと回せていないという会社も多く見かけます。行き当たりばったりの対応で、仕事がどんどん後手後手にまわり、社員がみるみる疲弊し、1人抜け、2人抜け、さらに事業が回せなくなっていく。こうした未熟な組織では、長続きしないのも当然です。
ここでも必要なのは、「社長力」です。事業を継続させるためにどんな戦略が必要なのか。事業をきちんと回すためにはどのような組織作りが必要なのか。こうした社長力が備わった状態で起業をすれば、その事業は継続・拡大へと進むことができるでしょう。
実は、今、トップリーダーを目指しやすい時代に入っています。
20世紀までは、企業の中で社長にたどりつくには、係長、課長、部長、役員と1つひとつ丁寧に出世の階段を上り、順送りで社長の座を射止めるということが必須の流れでした。ですが、今では企業刷新のために、順送り以外の道で抜擢されるケースが非常に増えてきています。また、多くの中堅中小企業では、社長が60~80代となり引退の時期に差し掛かっています。
このチャンスを生かし、皆さまには、ぜひ「社長力」を身につけて、トップリーダーを目指してほしいと思います。その具体的な身につけ方について、「トップリーダーの基礎力」「コミュニケーション術」「チームの動かし方」「戦略力」「キャリア力」の5章に分けけて紹介しました。機会がありましたら、手に取ってご覧いただければ幸いです。
「社長力」を身につけトップリーダーになった皆さまと近い将来、会えることを楽しみにしています。
●著者プロフィール:井上和幸
1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。人事部門、広報室、新規事業立ち上げを経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年より株式会社リクルート・エックス(2006年に社名変更、現・リクルートエグゼクティブエージェント)。エグゼクティブコンサルタント、事業企画室長を経て、マネージングディレクターに就任。
2010年2月に株式会社 経営者JPを設立(2010年4月創業)、代表取締役社長・CEOに就任。経営者の人材・組織戦略顧問を務める。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。自ら8000名超の経営者・経営幹部と対面してきた実体験に基づき、実例・実践例から導き出された公式を、論理的にわりやすく伝えながら、クライアントである企業・個人の個々の状況を的確に捉えた、スピーディなコンサルティング提供力に定評がある。著書に『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない係長・主任のルール』(明日香出版社)、など。メディア出演多数。
(ITmedia エグゼクティブ)