
4人の誤認逮捕につながった遠隔操作ウイルス事件で、起訴されていた片山祐輔被告(32)が自分が犯人であることを認めた。片山被告が告白した佐藤博史弁護士が5月20日記者会見し、連絡が取れなくなっていた片山被告の行動や、きっかけになった真犯人からのメール、これまで謎だった点の真相などについて、本人から聞いた話について語った。
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●「やった」という気持ちに
片山さんは述懐する形で述べていた。ラストメッセージに警察・検察の恨みが書いてあるが、最初はそういうものではなく、横浜CSRF事件はやってみたら簡単にできてしまったと。「iesys」を作って4人が誤認逮捕され、不謹慎だが「やった」という気持ちになったと言っていた。
以前、真犯人についてどうかと聞いたところ、片山さんは「真犯人はサイコパスだと思います」と言っていた。彼いわく、自分がそうなんだという。うそが平気でつけると。うそは巧みだと思うが、意図的にやっているのではなく、自然な感じでできてしまう。そう自分で精神分析している。病気というか──もう1つ、「ポイントオブノーリターン」、引き返せないポイントという言葉を使ったことがある。警察が捜索するのはしょうがないが、任意で事情を聞いて逮捕にまで一気にもっていったことで引き返せなくなったと説明してきたが、自分がポイントオブノーリターンを超えてしまっていたと説明していた。どこかで引き返せなくなっていたと。
●「壊れている」
全く新しい観点から見ないといけないだろう。前の事件の時に「解離性人格障害」という診断があった。現在は適応障害やうつだが、現在は薬は飲んでいなという。もっと別の角度から考えていかないといけないだろう。弁護の考えもまとまらないが、こういう事態になってみて、もし事件から学ぶことがあるとすれば、どうしてああいう人が生まれたということ。半分だまされたということだが、現代の病理ですね。そういうことを考えないと。
あるサイトが、ラストメッセージの中に「壊れている」と表現している部分がある、これが片山氏の心象風景ではないかと指摘していたが、これがぴたっと当たっていた。母親に対する感情ですね、そこから衝動的に今回の行為に出てしまったのではないか。ぜひ心理面に光を当ててほしい。残念ながら私はそういう配慮が及ばなかった。
事務所に着いてから、片山さんは電源を切っていたたスマホのメールを読んでみたところ、母親からのメールは「あなたが真犯人だったとしても受け入れる」という内容だったようだ。
母親に合わせるが顔ないと言っていたが、意を決して電話をさせた。そうしたら、母親は私には分かっていたというようなことを、うそをつき通すことはできなかったんですねというようなことを言っていた。ちゃんと出てくるの待ってるというようなことを言い、片山さんも悪かった、悪かったと言っていた。お母さんと電話していた時、受け入れると言われていた時に涙ぐんでいたような記憶ある。検察官を待つ時間、親しかった友人にも電話をしていた。
●どこまで反省しているかは分からない
誤認逮捕された人に対しどう思うのかも当然聞いた。すいませんということは言っていたが、通り一遍の言葉で言えるようなものでもないし、精神状態を考えてもどこまで反省しているかは分からない。愉快犯的なものでもあり、どこまで理解しているかはわからない。
仕掛けたのは6~7人だと言っていた。真犯人はメールでたくさんの人をのぞいたといっていたが、あれはうそだと。
●これ以上人をあざむくことをしないで
2日後に公判の予定があるが、地裁に連絡して証人尋問をやめた。2日後は被告人質問しかやりようがないが、精神的にも安定していないし、どういうことを聞いていいか分からない。裁判所が決めることだが、次回は打ち合わせ程度とし、31日に次の公判が予定されているから、そこでまとまった形で心境をしゃべらせてもらうのが適切では、と伝えた。
報道陣:──昨日は「無罪」を主張していたが。
昨日の時点ではまさにそういう風に考えていた。昨日の段階では真犯人からのメールであることは間違いないと言っていた。片山さんが送ったものではないと。半分は正しかったが、半分は裏切られた形だ。秘密のPCとスマホも持っていた。わたしたちをあざむいていた。
こんな言い方してどうかとも思うが、今回の件はむしろよかったのではないかと言った。これがなければこのまま無罪の主張を続けただろう。それを見破るのは検察の役割だと、そういう割り切り方も可能だったが──
4月、母親が落ち込んでいるということで、東北への旅行に母親や事務所の者と行き、とても良かったという。お母さんが1つのきっかけ。スマホを埋めるのを見られていたことがまさかばれるとは思わなかったが、DNAなどには無頓着だったので、パーフェクトに自分のスマホだと分かるものだった。これが起きなかったらわれわれもだまされっぱなしだった。良かったじゃないかと、これ以上人をあざむくことをしないで、何があったのか説明することが役割だ、それに私は付き合うよ、と言った。
●一連の事件の動機は?
動機は本人もよく分からないのではないか。仕事の給料が安いというようなことも言っていたが、尊敬する父親を早くになくし、同じITの世界に入り、母親と暮らしていたが、横浜CSRFがうまくいったことから少しずつ手を染めていって、誤認逮捕で大きくなった。犯行声明メールは送るつもりはなかったという。途中から思いついたと言っていた。
警察への恨みなどを口にすることはなかった。解離性人格障害という前の事件時の診断だが、刑務所でコミュニケーションをとる必要があり、コミュニケーションがとれるようになったと。前の事件について警察・検察を恨むようないと言っていた。
収監の際、検事は優しい態度で接していた。法定では検察が間違っていると言っていたことについてすいませんでしたと謝っていた。そういうことはいいんだよと検事は言っていたが、そういう意味では素直なところがある。言い逃れをするようなそぶりは全くなく、聞かれたことは答えていた。
●雲取山には12月1日にUSBメモリを埋めた
複数犯ならその人に演出をさせればいい。少なくとも私は1人でやったと、単独犯だと思う。
雲取山の山頂のUSBメモリは(2012年)12月1日に登った時に埋めたそうだ。小型のスコップがあり、それを携行していた。それで埋めた。(「謹賀新年メール」を受けて警察は元日に捜索したものの見つからなかったが)1月1日にも実際には埋まっていた。1月1日に発見されると思っていたところ発見されなかったので、風などで飛ばされてしまったのかもしれないと思い、「延長戦メール」(13年1月5日)を送った。江ノ島におびき寄せるのではなく、それがたまたま見つかったと。われわれが推理するのを横で見ていた。
江ノ島の猫の写真の問題だが、警察も言っていないが、実際の機材はビデオカメラの「play sport」。縦型に使って横の写真が撮れるのだそうだ。それで撮影したと。だから(警察のリークで)スマホから写真が復元されたという報道があったが、彼は絶対間違ってないと思ったんですね。
1月5日に江ノ島に行った時、防犯カメラのことは全く念頭になかったのだそうです。SDカードが回収され、防犯カメラに写っていたということもあり、これはしまったと思ったと、どう説明しようか考えていたと。その1つに、play sportでは縦位置で横位置の写真が撮れる、スマホを縦に構えているのでは手袋をしている状態では写せないではないか、という理由を考えた。うそをつく場合、最初から全部言うと分かってしまうので、「後から言われてみて気付いた」などとだんだん分かるようにしたのだと。
反省すべき点があるかということだが、片山さんのほうが上回っていたということだ。職業倫理として、やっていないと言った人にはその通り弁護するべきだが、疑問を持ったままの場合もある。この事件では私は無実を信じるといったが、その意味ではだまされたことになる。
当初、防犯カメラで猫に首輪を付けているのが写っていたとされたのは問題だと思ったが、実際にはそういうことはなかった。スマホから写真が復元されたという報道もあった。私はそれはないと思ったが、その読みは合っていた。公判でも決定的証拠は示されなかった。悔し紛れに言っているわけではないが、今回のメールがなければ私は自信をもって無罪を主張していただろう。それが刑事弁護のこわいところかもしれない。
●河川敷では見られていないと思っていた
もし有罪なら実刑判決となり、収監される。その時点で予約メール機能を使って、収監された後に真犯人からのメールが送られるようにしよう、無罪判決ならそういことはしない──それが彼のシナリオだったという。だが母親のこともあり、それを前倒しにしてしまった。予約送信という機能を使ったトリックはもともと考えていたことだ。
(スマホを埋めた)15日、自転車でバス停に行き、バスに乗った。バスに乗る時に誰もいなかった。降りた時も誰もいなかった。河川敷は見晴らしがいいので尾行はないだろうと思った。150メートル先に男性が1人いたが、自分が到着するより前にいた。だから大丈夫だと思って埋めたと。下見にも2、3回行ったことがあるという。
警察からすると、なんで河川敷に行ったのかということになる。警察はもしかするとあらかじめいたのか、対岸からなのかもしれないが、15日に埋めて16日にメールが送られている。いつ警察がスマホを回収したかは分かっていないが、真犯人からメールが送られてから発見し、鑑定などをして発表したのではないか。時間差があったのは、メールが送信されたのを受けて、彼の行動を見直そうということからだったのではないか。片山さんはまさかそれが回収されるとは思っていなかったので、こうなった。
スマホは身分証明書が不要で購入できるプリペイドのもので、SIMカードは4月に発売されたそうだが、外国人が一時的に使うものとして成田空港などで自販機でも購入できるSIMカードがあり、全く足がつかないものを使ったという。秋葉原で買ったと言っていた。
スマホは埋めっぱなしが前提だった。送信はソフトがあって、それをインストールしたと言っていた。
=つづく