
世界で4億6000万、国内でも5000万ユーザーを突破する「LINE」アプリ。そのLINEを使って実店舗の集客や販売促進を促す企業向けサービスが「LINE@」だ。2012年12月のサービス開始から累計で4万件以上のアカウントが開設されている。LINEアプリ内に店舗のWebサイトを作れるほか、お客さんとLINE上の「友だち」のように会話ができる「お店トーク」機能などを搭載し、クーポンやセール情報の配信、個別の問合せなどを行えることが特徴だ。
【画像:お店ページの概要】
6月12日に開催されたセミナーで、LINE Business Partners 代表取締役社長の長福久弘氏が登壇し、実例を交えながらLINE@の効率的な活用方法を紹介した。セミナーには実際にLINE@を導入している店舗の責任者や従業員などが参加しており、質疑応答からはまだ手探りでLINE@を使っている様子がうかがえた。
●「メールや電話をするほどでもないこと」をLINEでカバー
LINE@は5月16日のリニューアルで、LINE内に店舗の簡易Webサイトである「お店ページ」を作れる機能や、無料でLINE@を利用できる「スタンダードプラン」、お客さんと「友だち」のようにメッセージのやり取りができる「お店トーク」機能が追加された。
長福氏は「アプリ内ホームページは、企業から要望の多かった求人情報枠を新たに設定した。LINEユーザーは若くてアクティブな人が多いので、求人情報と相性がいい。お店トークは営業時間外にメッセージを送るユーザーが多い。これまでカバーしきれなかったちょっとした相談や問い合わせに対応できるようになり、お客さんの満足度も向上する」と説明する。
LINE@をうまく活用している例として、リラクゼーションを行う「リラク中目黒店」や焼き肉屋の「黒毛和牛・ニクゼン」などが挙げられた。「メールや電話をするほどではないちょっとした問い合わせ」が増えたほか、「本日のオススメ料理や割引情報」など、ユーザーにメリットのある情報を配信すると集客増加に効果があるという。
「LINEは、行動喚起力の強いマーケティングのハブ。あくまで情報を流す1ツールとして、ほかのサービスと組み合わせることでうまく活用してほしい」と長福氏は述べる。
だが、まだ新しいサービスであることや、事業主がスマホアプリにあまり明るくない場合があるなど、まだ誰もが手探りでLINE@を使用している様子もうかがえた。セミナー参加者からは、「ホストクラブなど夜のお店で利用可能になる予定はないのか」「自社以外の会社の宣伝はできないのか」「プロフィールページに動画をアップロードすることはできないのか」「ユーザーがお店トークの存在を認知してくれない」「顧客ごとにメッセージの内容を分けることはできないのか」など、実際にLINE@を使う上での疑問点や不明点が数多くぶつけられた。長福氏は「実体験に基づき、必要な機能をリリースし続ける」としている。
また、「LINE@をNTTの電話回線のように、各店舗に当たり前に存在するようにしたい。さらに、ポイントマイレージや予約システム、業種別のカテゴリ分け、シフト管理や情報共有などができる店舗内SNS機能などを実装していきたい」(長福氏)と今後の展望を語った。
●LINEアプリやユーザー特性を知ることが重要
では、どうすればLINE@をうまく活用できるのだろうか。LINE@を始め、ソーシャルメディアの話題を幅広く扱う「ガイアックスソーシャルメディアラボ」編集長の末広一陽氏は「LINEアプリやユーザーの特性を知ることが大事」だと語る。
末広氏は「LINEはプッシュでメッセージを送れることが大きな特徴。Facebookはファンとのコミュニケーションをしやすく、Twitterは拡散性やオープン性が特徴。それぞれを使い分ける上で、最終的にどのSNSに呼び込むかをあらかじめ決めておくのが一番大事」と話す。
これらを踏まえた上で、「ホーム投稿やメッセージの内容」「クーポンの配信」「メッセージの作成方法」「テキスト配信のタイミング」の4つについて具体的な運用方法を説明した。また、初心者が陥りがちなNG行動についても注意を促した。
ユーザーがコメントを付けられるホーム投稿では、「ファンにリアクションを求めるような内容が望ましい。プッシュ通知がされないので、楽しいコンテンツにしてユーザーに見にきてもらう必要がある」と末広氏は話す。一方で、リアルタイムにプッシュ通知が来るメッセージの場合は「クーポンやセール情報のほか、天気予報や占いなど、ちょっとしたお役立ち情報なども効果的」(末広氏)だという。「煩わしいと思われない程度に商品・サービス情報をしっかり出すことも大事。書くことが思いつかないときは季節や時事ネタを盛り込むといい。実店舗と結びついたサービスなので、地域ネタも有効」(末広氏)とアドバイスした。
ユーザーにとって重要なクーポンについては、「文言とデザインを毎回変えるほか、飲食店の場合は店内の予約状況を併記すると親切で効果が高い。割り引くよりも、新商品をプレゼントする方がフィードバックを得られるので効果的」と末広氏は話す。LINE@はメッセージ開封率60%、クーポンのURLのクリック率25%、クーポン利用率10%と、「開封率やクーポンの利用率がメルマガなどと比べて高いのも特徴」(末広氏)だという。
メッセージの作成方法については、「顧客に覚えてもらうために語尾や一人称などでキャラクター付けをる、ブロック防止のためにこちらからメッセージの『通知オフ』を促す、スマホの画面に収まるように1つのメッセージを200字程度で収めたる(末広氏)といった具体例が挙げられた。
メッセージの配信タイミングは「ターゲットユーザーの行動を分析し、いくつかの時間帯で試したあと検証していくことが大事」(末広氏)としながらも、「一般的に、ビジネスマンは通勤や帰宅時間の8時や21時、主婦は家事が一段落した13時~16時が有効」(だと末広氏は説明する。
また、「ターゲットが誰か別の人と一緒にいるタイミングで送るのもオススメ。特に高校生などは、そこからクチコミで広がっていく可能性がある。また、セール情報は遅くとも前日の18~21時までには流すこと」と末広氏は話す。
最後に、LINE@を使う上で陥りがちなミスとして「メッセージを出しすぎてブロックされる、イベント情報を出すのが遅すぎる、LINE@の取り組みを全従業員に周知できていない」(末広氏)といったことを挙げた。「お客さんの写真を許可なくアップしない」というのは、LINE@に限らずSNSを使う上でも当てはまるところがあるだろう。
末広氏は「SNSで丁寧に対応していると、その評判がクチコミで広がることがあるので、継続は大事。正直知っておくべきことが多く、LINE@は運用が難しい。特にお店トークはしっかりと返信できる体制を整えてから開始することをオススメしたい」と締めくくった。
[村上万純,ITmedia]