デルの8型ディスプレイ搭載Windows 8.1タブレットにはオプションの純正キーボードユニットがある。その「ワンクラス上の使い勝手」を試してみた。
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●「ビジネスで使うならキーボードが必要だね」ってデルの偉い人がいっていた
「Venue 8 Pro」は、8型ディスプレイを搭載するタブレットでOSに32ビット版のWindows 8.1を導入する。“Bay Trail-T”世代のAtom Z3740D(1.33GHz/最大1.83GHz)を搭載し、システムメモリを2Gバイト確保し、データストレージに容量64GバイトのeMMCを用意する。
デルは、2014年6月に同じ8型ディスプレイを搭載する「Venue 8」を発表したが、こちらのOSはAndroid 4.4だ。同じディスプレイサイズのタブレットでWindows 8.1モデルとAndroid 4.4モデルを用意したデルは、その違いを「Andriodタブレットはプライベートでオフタイムを楽しむために使うもの、Windowsタブレットはビジネスでオンタイムを効率よく仕事するために使うもの」と考えている(日本ではVenue 8 Proのみ販売)。
Windows 8.1を導入したVenue 8 Proは、ビジネスでも使えるプロフェッショナルのためのタブレットとデルはいうが、Windows 8.1がいかにタッチ操作を考慮したOSといえど、OfficeをはじめとするWindowsアプリケーションをストレスなく使うなら、やはり、キーボードは必要だ。これは、「8型ディスプレイを搭載してWindows 8.1を導入したタブレットを半年仕事で使った評価担当者の超私的な意見」というだけでなく、米Dell本社 タブレットプロダクトグループ担当上級副社長のネイル・ハンド氏も同意見とCOMPUTEX TAIPEI 2014の関係者向け説明会で述べている。
ハンド氏の言葉が示す通り、デルは、Venue 8 Proのオプションとして、フォリオケースが付属するキーボードユニットを用意している。キーボードユニットのサイズは実測で約221(幅)×136(奥行き)×2~5.5(高さ)ミリ、重さは227グラムだ。デバイスとの接続はBluetooth 4.0を利用する。
フォリオケースの重さは実測で約181グラム。評価用に使ったVenue 8 Proの重さが約391グラムだったので、本体とフォリオケース、そして、キーボードユニットを合わせた重さは約800グラムになる。これに、フォリオケースに用意しているペンホルダーにオプションで重さ約18グラムのアクティブスタイラスペンを加えると818グラムに達する。ただ、それでも10型ディスプレイを搭載したクラムシェルタイプのノートPCと比べるとまだ軽い。
フォリオケースを開いて、Venue 8 Proを自立するのは簡単だ。カバーをそのまま本体背面側まで開き、カバーケースの背面側にあるスタイラスペンホルダに差して固定する。フリップタイプのコンバーチブルノートPCでディスプレイをグリンと背面まで開く感覚に近い。
フォリオケースから本体を外したり、本体を取り付けたりするときも、方法さえ間違えなければ力もいらず時間もかからない。とはいえ、この評価作業中では、一度取り付けてしまったらそのままキーボードとセットにしてクラムシェルスタイルのノートPCのように使い続けていた。
キーボードユニットは、フォリオケースのカバーとキーボードユニットの双方に備えた磁石で固定する。磁力は強力でいったん固定したら垂直に持ち上げても外れない(水平にして持ち上げると外れるときもあった)。
ただ、フォリオケースのディスプレイカバーとVenue 8 Proのディスプレイを固定する磁石がなく、それに代わる固定方法がないため、注意しないと持ち方によっては“パカーン”と開いてしまう。キーボードとフォリオケースの固定は、カバンの中に入れたときにばらばらにならないようにするためのものと考えておくのが無難だ。
●約17ミリのキーピッチで長文入力もストレスなし
標準サイズのキーは、キーピッチが実測で約17ミリ、キートップサイズは14ミリを確保している。一部に狭小キーがあって、その場合、キーピッチは約12ミリ、キートップサイズは約9ミリと体感的にも分かるほどに異なる。ただ、ほとんどのキーは均等キーピッチを確保しており、狭小キーは各段右端の1~2個だけだ。
レイアウトは、標準的なJIS配列と比べて一部のキーで変則となっている。特に以下の配列は日本語の文章入力で影響があるだろう。
・長音で使う「マイナス/イコール」キーが一段下の「P」キー右脇
・「かっこ」キーと「かっこ閉じ」キーがスペースバーの左右
・「コロン」キーがスペースバーの右側
・「Z」キーの左脇がシフトキーではなく「@」キー
“かな入力”をするユーザーには、変則配列キーに伴うかなキーの変更、特に最下段に移動した「け」「む」の影響が大きいかもしれない。
キーストロークは、実測で約1ミリを確保している。文章を入力していると、もうひと押ししたくなる気持ちは否定できない。ただ、ぐっとキーを押し込んだ指の力をぐっと支えてくれるほどに剛性があるので、変に指の力を加減することなく思う存分入力できる。
すべてのアルファベットキーが均等ピッチを確保していて、かつ、ピッチが17ミリと広いおかげで、浅いストロークと一部のキー配置に慣れてしまえば、文章入力は快適だ。その感触は11.6型ディスプレイを搭載したクラムシェルスタイルのUltrabookで、ボディの薄さを重視したモデルのキーボードに近い。
●狭い場所でも使えるのはモバイル利用で実は重要
キーボートユニットとフォリオケースをスタンドにしたとき、約221(幅)×215(奥行き)ミリの空間が必要だ。幅が221ミリなので、スタンドタイプのコーヒーショップのテーブルで飲み物のカップと共存できる。新幹線や飛行機のテーブルでも幅は問題ない。ただ、奥行きがぎりぎりになる場合もあるだろう。
そのときは、本体をテーブルに置いて、キーボードユニットは膝に置いて使うようになる。ただ、折り畳み式とは異なり、キーボードユニットの剛性が十分あるので、膝に置いた状態でキーボードを打ち込んでもたわむことなく使い続けることが可能だ。
使うスタイルがある程度柔軟に設定できるのは、屋外利用でも有利だ。例えば、新幹線や飛行機でリクライニングシートでくつろぎながら、フォリオケースで自立したVenue 8 Proをテーブルに置いて、キーボードは手元に置いてコンテンツプレーヤーとしても使えるのは、このようなセパレートタイプのワイヤレスキーボードとの組み合わせだからこそ可能になる。
ストアアプリがそろってきて、タッチ操作でもできることが増えてきているが、ビジネスの現場で求められる“生産的活動”を効率よく行うには、やはりキーボードが必要だ。そして、設置面積が少なくて済む「ノートPC」は、街のコーヒースタンドや乗り物だけでなく、多種多様な書類やドキュメントが散乱しているオフィスの机でも支障なく使えてしまう。
ビジネス文具感覚として使うWindowsデバイスとして、Venue 8 Proとフォリオケースが付属するワイヤレスキーボードユニットの組み合わせは、意外と使える戦力となるはずだ。
[長浜和也(撮影:矢野渉),ITmedia]