
●サイバーなサングラスのように見えなくもない。それが「MOVERIO BT-200」
最近では、スマートフォンが先進国市場で多くのユーザーにいきわたり、あまり爆発的に市場の伸びを期待できなくなってきた。そんななかで、メーカーは新たな市場を求めて「ウェアラブルデバイス」に力を入れるようになってきた。これはリストバンドやメガネ、服のように身に着けるという、まさに「ウェアラブル」なデバイスたちだ。
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そんななかで注目されているジャンルの1つが「スマートグラス」と呼ばれるものだ。2013年のGoogle I/Oにおいて発表された「GoogleGlass」が大きな注目を集めたのだ。これはヘッドマウントディスプレイにスマートデバイス的な機能を組み込んだ製品だ。
そんななか、日本のエプソン販売もこの春、スマートグラスの新製品を投入する。それが「MOVERIO(モベリオ) BT-200」だ。このBT-200にはHDMI入力が可能なBT-200AVというモデルも発売される。ちなみにMOVERIOには「BT-100」という製品もあり(2011年11月に発売)、BT-200は第2世代の製品となる。ここでは、エプソン渾身のウェアラブルデバイス「BT-200」をレビューしていこう。
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●メガネ使用者の俺でも装着できるのかっ?
○まずは外観をチェケラ!
BT-200は両目で映像を見ることができるタイプなので、それ自体がメガネのような形状なわけだが、そのデザインはサイバーで近未来的な感じがする。見方によってはちょっと変わったサングラスのようにも見えるかもしれない。
グラスの部分の中央にはプリズム(曲光グラス)が仕込まれていて、サイド部分から横向きに投影されてくる映像をユーザー側に曲げて見せる仕組みだ。プリズム以外の部分では外光をそのまま通過させるので、普通に外界が見えることになる。ちなみに、その前面には「シェード」と呼ばれるカバーが配置される。
シェードは取り外して交換できる。標準で色が薄いものと濃いものが付属しているが、色が濃い方はまさにサングラス的な印象だ。シェードには光学部の前面をカバーするという役目以外に、これを使っているユーザーが投影画面を見やすくするという役目も持っている。
このスマートグラスはシースルーシステムなので、周囲は普通にそのままの光景が見えて、その中央に映像を投影するシステムになっている。カバーグラスはこの部分に色をつけてくれるが、濃いカバーグラスにすれば明るい場所でも投影画面がよく見える。
動画などを落ち着いて見たい場合は濃いグラスを、日常用途では薄いグラスをと使い分けると便利そうだ。
○メガネ使用者の俺でも装着できるのかっ?
ヘッドマウントディスプレイでしばしば問題になるのがメガネをかけている人の使用だ。つまりはメガネをかけている上にヘッドマウントディスプレイを装着するので、メガネ・オン・メガネ状態になってしまい、フィットせずに使いにくいというわけだ。
そんなメガネ使用者のためにMOVERIOにはメガネレンズフレームが付属していて、インサイド側(編集注:内側のことです)にセットすることができる。このフレームに自分の度数でレンズを作って入れれば、普通にメガネをかけているような補正で自然にこのMOVERIOを使うことができる。
普通のメガネの上からMOVERIOをかけることもできるが、鼻部分の支えがないため、下にずり落ちてしまう。そのズリ落ちた状態でもなんとか使えるが、ちょっとマヌケではある。MOVERIOがメガネのフレームにハマってうまく重なり、その状態でしばらく使えることもあったが常用は難しい。やはり、メガネ使用者が本格的に使うには付属のレンズフレームに自分でレンズを入れて装着するのがよさそうだ。
●ハードウェアの構成をチェケラ!
このMOVERIOはこのメガネ部分とコントローラ部分の2つのハードウェアで構成されている。使用時はメガネから出ているケーブルのコネクタをこのコントローラに接続する必要がある。
このコントローラは液晶ディスプレイこそ搭載していないが、それを除けばまるでAndroidスマートフォンのような形状だ。上部はタッチ操作のためのパネルで、下部には3つの物理ボタンがある。ちなみに、このMOVERIOは基本的にAndroid 4.0でドライブされている。
充電については、このコントローラにmicroUSBのコネクタを持ち、USB接続で充電するようになっている。充電用のACアダプターが付属するが、ノートPCとUSBケーブルで接続して充電することも可能だ。駆動時間はメーカー公称で動画連続再生で6時間とのことだが、たしかに普通に使って4時間以上は持つという感じだ。
なお、MOVERIOはスマートフォン同様、さまざまなセンサーを搭載しており、GPS、地磁気センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーなどを搭載している。
○使用環境ってどないやねん?
電源オンはコントローラ側面のスライドスイッチで行うことができる。スイッチオンからしばらくして、EPSONのロゴ、MOVERIOのロゴが表示された後にデスクトップが表示される。
このデスクトップは普通のAndroidのホーム画面と同じではなく、MOVERIOのためにカスタマイズされており、以下のようなアイテムが配置されている。普通のAndroid端末と異なり画面撮影やキャプチャが困難であるため、言葉で紹介する。
・左上隅:アイコンクリックでGoogle検索を起動。フリックで文字入力できる。
・右上隅:アイコンクリックでアプリのラウンチャーを起動できるアイコン。タブでウィジェットも表示可能で、デフォルトのウィジェットは「Kobo」関係、音声アシストなど。
・左下:3つのAndroid物理ボタンのアイコンが備えられている。
・右下:時計、Bletooth、バッテリ残量表示。
ちなみに、カーソルはコントローラのタッチパネルで指を滑らせることで移動でき、タップで決定する。
中央部には普通のAndroidのホーム画面のようなゾーンがあり、アイコンやウィジェットを配置できるのだが、デフォルトでは以下のようなアイコンが左から配置されていた。これは発売前の製品なので、実際の製品では異なるかもしれない。
・設定
・ギャラリー:動画、静止画像を表示できる
・ブラウザ
・Moverio Mirror
・カメラ
・KOBOアプリ
ほとんどは普通のAndroidで見慣れたアプリたちだが、「Moverio Mirror」だけは目新しい。これはMOVERIOのためのアプリで、Miracastのためのアプリだ。
MiracastはWi-Fiでディスプレイを1対1で接続する技術で、他のMiracast対応デバイスの画面をMOVERIOに表示できる。たとえば、Android OSは4.2からこのMiracastに対応しているので、Android端末で動画を再生したり、他の人が表示しているデータをチェックしたりすることができる。
このMOVERIOは基本的にはAndroid 4.0で動作しているとはいえ、その独自のUI(ユーザーインタフェース)のため、通常のAndroidアプリを普通に動かしても使いにくいので、エプソンはMOVERIOのために、独自のストア「MOVERIO App Store」をオープンし、MOVERIOで使いやすいアプリを提供する予定だ。逆に言うと標準のGooglePlayは使わない。
この独自ストアはBT-200のサービスは発売開始とともに行われるということで、今回、借用した時点ではまだ開始されていなかった。
●実際に使ってみた俺
MOVERIOを実際に使ってみたインプレッションとしては、一口に言えば、予想以上に実用性を感じる。投影画面も予想以上にクリアに見え、懸念したほどには目の疲労がないと感じた。最近のヘッドマウントディスプレイの進化には驚かせられる。ちなみに暗いシェードを使うと投影画面が見やすくていい。
コントローラでの操作は理屈の上ではスマートフォンと同じタッチ操作でカーソルを移動してタップで確定できるのだが、表示がグラスに変わっただけで、はじめはちょっと戸惑うがすぐに慣れる。
このMOVERIOの面白いところは、周囲にいる人に気付かれずにさまざまなアプリを動かすことができるということがある。動画の再生や画像を見ていても、周囲の人には何をしているのかわからないわけだ。
なお、MOVERIOが投影する映像と周囲はフォーカスの距離感が異なる。投影されている映像はスルーで見る周囲の映像よりも近くに見えるので、両者に同時にフォーカスをあわせるのは困難に感じた。
そのため、周囲の人がMOVERIOユーザーの目の動きに注目していると、投影画面を見ているのか、周囲を見ているのか、わかってしまうかもしれない。そのため、周囲に目の動きを悟られたくない場合は、色の濃いシェードをしておくといいだろう。
また、このMOVERIO自体にはスピーカーが搭載されておらず、音を聴くにはイヤホンやヘッドホンを接続して使う必要があることでメリットとデメリットがある。ちなみに標準でマイクつきのカナル型イヤホンが付属する
メリットは好みのイヤホンやヘッドホンを使うことができること。付属のイヤホン以上に高音質なデバイスを使うことができるわけで、これは映画などを視聴する場合にメリットがある。ドルビーデジタルプラス対応なので、イヤホンでもサラウンド感のある音を楽しめる。
そして、デメリットとしては、イヤホンをして音を聞けるようにすると、会話をしているときなどに周囲の音を聴くのがやや困難だという問題がある。
AVモデルではHDMIで接続して映像を入力することができる。ブルーレイディスクプレイヤーを接続して映画を楽しむこともできるわけだが、借りた機材ではこの機能はまだ、実装されていなかった。残念なことだ。
●MOVERIOを装着してあちこち歩きまわってみた
○バーコードにも対応しているカメラ
ちょっと使ってみて面白かったのはカメラ機能。MOVERIOにはカメラも搭載されているのだが、30万画素でごく小さいものなので、普通にちょっと見ただけではカメラがあるとは気がつかないだろう。そんな状態のなかで密かに写真を撮ったり、動画を録画したりするのは面白い。
このカメラ機能はデスクトップにあるアプリのカメラを起動して使うことになる。撮影操作はごく普通のカメラアプリと変わらず、静止画像モード、動画モードを必要に応じて切りかえ、撮影ボタンで撮影することになる。
独自機能として、カメラ機能を起動したときに、画像を撮影するか、バーコードを撮影するか選択できる。URL情報が入ったQRコードなどを読み取って、そのサイトをすぐに表示できるのが面白い。最近ではQRコードが入ったポスターや雑誌ページなども多いので、情報がすぐにチェックできて便利だろう。
○あちこち歩きまわってみた
実際にあちこち歩きまわって、このスマートグラスが人々にどう受け止められるか?を試してみた。渋谷のセンター街などを歩いてみても、あまり人目を惹くことはないようだ。逆に電車に乗っているときは気になる人もいるようで、チラチラ見てくる人もいた。まあ、全体にあまり周囲に違和感を与えてはいないという印象だ(編集注:違和感ありありですよ)。
コントローラを操作していても、傍目にはスマートフォンを操作しているように見え、不自然さがないのかもしれない。画面が表示されていないのに気が付かなければだが。
デジタルグッズにあまり詳しくない人々にとって、MOVERIOはサイバーなサングラス程度に見えるのかもしれない。個人的には、ファッション的にちょっとワイルドなDIESELなどが合いそうに思う。
○MOVERIOがマッチする人は? はたして俺にはマッチしたのだろうか?
このMOVEIOはスマートグラスとして、大きく分けて2つの場面を想定している。Androidアプリを使うことと動画を見ることだ。
今回、AVモデルのHDMI接続は試せなかったが、3D動画の視聴にも対応しており、一般的なアクティブシャッターメガネを使う3Dテレビよりも目に負担を掛けずに視聴できるはずだ。これは、メガネで1つの画面の映像を切り替えるのではなく、左右の目に対してそれぞれの映像を表示できるためだ。また、3Dでなくとも、何を見ているかを周囲に悟られずにどこでも映像を見られるのはいい。
Androidアプリに関しては、「このMOVERIOの環境を活かしたアプリがどれだけ出てくるか?」「これを活かした使い方ができるか?」にかかっているように思う。
現状ではカメラ機能などが面白く使えるが、画像や動画を見たり、電子書籍を読んだりするのも便利だ。短時間の会議などであれば、動画をボイスレコーダー的に使うこともできる。保存メディアとして、本体内蔵メモリ以外にmicroSDメモリーカードも使えるのがいい。
現状でMOVERIOは、AVモデルは目を疲れさせずに3D映画を楽しみたい人に、そしてAVモデルと標準モデルともに、どこでも人に知られずにアプリやカメラ機能を使いたい人、画像や動画を見たい人に向いていると思う。
また、散歩の時などにもMOVERIOは楽しそうだ。好きな音楽を聞きながら散歩している人は多いが、MOVERIOなら好きな動画を見ながら散歩をしたり、何気なく写真を撮ったりすることもできる。
(一条真人)