「本屋好きを自称している人間がまだタコシェに行ってないなんて!」
本屋好きの友人に「タコシェに行った?」と聞かれるたびにぼくは恥ずかしくて死にそうになった。何てったって有名店。しかも、住居から自転車で行ける距離にあるのにだ。
そうやって自分の怠惰に対する憤りで胸を震わせていたとき中野ブロードウェイにあるドロッセルマイヤーというテーブルゲーム専門店の方と知り合いになり、せっかくなので休日に行こうと思ったときにふと気付いた。
「タコシェに行くチャンスではないか!」
そうなれば話は早い。その週末にはすぐ行くことにした。こうしてぼくはようやく「タコシェ」に足を踏み入れたのだった(以下は2013年6月9日の記録だ)。
●ヌード看板
告白しよう。僕はこの看板を見て入るのをちゅうちょした。どうみてもスリムとはいえない性別不詳の人間がマンガタッチで描かれた看板。それがタコシェの看板だ。凄まじい濃さである。まるで覚悟を試されているようだ。
ちなみにこれは村上春樹の『またたび浴びたタマ』のイラストやジム・オルークのCDジャケットなどを手がけた友沢ミミヨさんのイラストだそうだ。
こんな看板を他の場所で掲げたらどうなるか。吉祥寺でも下北沢でも厳しいだろう。ギリギリ高円寺なら大丈夫だろうか。しかし、中野ブロードウェイだから許される。これはもう自信を持って言える。まんだらけはもちろん、さまざまなオタク的専門店が多い中野ブロードウェイだからこそ、こんな看板でも自然に受け入れられるのだ。
●レイアウトと雰囲気
白で統一された店内は、普通の古書店のように奥に長く、真ん中にある2つの平台で左右に分けられている。
白で統一とはいってももちろん「オシャレ」とは違う。中野ブロードウェイ的ゴチャゴチャ感にあふれている。店の中も外もゴチャゴチャというわけだ。とにかく中野ブロードウェイ的な店なのだ。
●タコシェの品ぞろえ――ミニコミがほとんど
品ぞろえはほとんどがミニコミで、新刊・古本も少し。表に子供用Tシャツや古本も置いてあるように雑貨も取り扱っている。
●タコシェで見つけた読みたい本6冊
さて、そんなマニアックな品ぞろえのタコシェだが、今回も、その中で僕が独断と偏見に基づいて読みたいと思った本を6冊ほど挙げておこう。
・『私説ミジンコ大全』
・『ファミコンの思い出』
・『世界の女とセックス』
・『ダブステップ・ディスクガイド』
・『雲遊天下』
・『風童』
『雲遊天下』以外は聞いたことのない本ばかり。さすがのマニアック具合である。それでこそタコシェ。それでこそ中野ブロードウェイ。
ところで、あえてミニコミ誌は取り上げなかったのはそれがタコシェの目玉だからだ。ミニコミ誌を含めるとよりディープな世界を提示できるのだがそれは来てのお楽しみである。
●中野に存在するミニコミ宇宙
広いとはいえない空間に所狭しと置かれた怪しいほどに情熱にあふれた小冊子。それに負けじと怪しい魅力を放つ市販本。
あまりの熱さにクラクラしたのは梅雨入りにしては暑すぎる陽気のせいではないだろう。圧倒されたのだ。会社生活では味わえない怪しげな情熱に。
中野にはミニコミでつくられた宇宙が存在する。異世界に触れた気分で中野を後にした。
[wakkyhr,eBook USER]