
先月、トルコで開催された「IFA Global Conference」の様子を伝えたが、番外編として欧州を中心としたテレビメーカーの動向について書いてみたいと思う。番外編とするのは、登場するメーカーが日本ではあまり馴染みがないからである。
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GPCに登場したテレビメーカーは4社。オランダのTP Visionはフィリップスブランドのテレビを企画・開発している会社でご存知の方も少なくないだろう。フィリップスはかつて、日本の電機メーカーがお手本としていた企業だ。ドイツのGRUNDIG(グルンディッヒと読む)は高級イメージの強いデザイン性も高い製品を販売するブランド。VESTELはトルコを拠点とするメーカーで、普及価格帯のテレビ販売で欧州全体に強みを持つ。残り1社は中国最大の液晶パネルベンダーTCL。TCLはテレビ本体の生産も行っているが他社ブランドでの供給が多く、日本メーカーにも顧客はいるはずだが、欧州では仏トムソンのブランドで自社製品を拡大してきた。
さて、バリエーション豊かな、しかし日本ではなじみのないメーカーが集まったGPC。各社はもちろん、今年後半に投入する予定の新製品や今年の戦略について話をしたのだが、こちらもまたバリエーション豊かで実に面白い。しかし一方で共通するワードもある。それは「4K」だ。各社のテレビ戦略を紹介するとともに、日本メーカーの動きとも対比しながら、グローバルのテレビトレンドを追いかけてみることにしよう。
まずフィリップスブランドのテレビを開発するTP Visionの製品。テレビ背後の壁に映像と同期する光を投影する「アンビライト」で知られるフィリップス製のテレビだが、彼らは4Kテレビの最上位モデルに、Androidを用いてユーザーインタフェースやインターネットコンテンツへの接続機能を実装した8000シリーズを紹介した。
サイズ展開は46V型と50V型で、大型テレビが売れない欧州市場を象徴しているが、それよりも興味深いのがAndroid OSの搭載だ。Androidをベースにしたテレビ向けプラットフォームならば、ご存じのようにこれまでもGoogle TVの機能を内蔵したモデルを各社が出していたが、フィリップスの8000シリーズはスマホ用とほぼ同じ。スマートフォンをMHL経由でテレビにつないでいるような感覚で使え、Google Playのアプリも利用できる。
スマートテレビ的機能をAndroidアプリとして提供し、リモコンに関しても一般的な赤外線だけでなく、アプリ経由での連動を強化している。果たしてテレビでAndroidそのままを動かしてどうするの? という気がしないでもないが、実際にはリモコンでの操作を意識したカスタマイズもしっかり行われている。
多くのネット動画アプリがAndroid向けにリリースされていることを考えると、VoDサービスやユーザー動画共有サービスの利用が盛んな国では、これも1つの解決方法なのかもしれない。
一方、オーディオメーカーとして1908年に創業されたGRUNDIGは、オーディオ時代の成功を背景に高級ブランドとして欧州では知られた名前だそうだが、現在はトルコ資本下にあり、白物家電からテレビまで幅広いブランドの製品を展開しているという。その商品リストを見ると、なるほどドイツらしいヘアラインの金属調仕上げを多用したソリッドなデザイン。
オーディオメーカー時代の技術力や高品質のブランドイメージを活用し、シンプルなデザイン(機能面でもシンプルに)や使い勝手を前面に押し出した多様な製品をラインアップしている。こうしたやり方は、多くの古いプレミアムブランドが各地にある欧州の白物家電でよくあるそうだが、昨今はオーディオ製品やビジュアル製品にも、そうした発掘型プレミアムブランドとデザイン志向の商品設計が浸透してきている。
テレビに関してはフィリップスよりも大型の4Kテレビをラインアップしており、65V型と55V型を用意する「FINE ART」シリーズがトップモデルとなる。前述したソリッドなデザインのアルミフレームは見た目もよく、確かに高級路線を志向していることが分かる。
ユーザーインタフェースの面でもグラフィカルなデザインのカッコよさなど、いかにもというう印象だ。実際の画質となると評価できる環境にないためコメントは差し控えるが、高級AV製品の概念が「より高級白物家電に近づいているな」という印象を強く受けた。
テレビ製品のビジネスが高級白物家電のビジネスモデルに近づいているのかもしれないという印象は、VESTELやTCLに話を聞いても同じだった。両社とも長らく映像製品に取り組んできた会社だが、AVメーカーとして”高画質”をコアコンピタンスとはしていない。
VESTELの話を聞くのは初めてだったが、デザインに関しても欧州らしいクリーンな印象な一方、価格は安い。多数のOEM製品を手掛けており、OEM出荷分も合わせると欧州ではトップ3に入るテレビメーカーになる。日本でいえば船井電機に近い印象だろうか。
TCLに関しては100V型を超えるサイズを含む大型4Kパネルでは世界トップの生産を誇る。自社生産分に関しても、高級製品はトムソンブランドで、自社ブランド分はスペックで勝負しつつも価格を抑えるというやり方で拡大している。自社ブランドの50V型フルHDは14万円ほど。一方で110V型も扱う。
もちろん、これが世界のすべてではない。しかしながら、画質・音質の話はほとんどなく、デザインとスペック、それに機能面では”カッコよさ”を優先して機能性は二の次(というと怒られるだろうが)という方向性は、日本のテレビメーカーとは真逆で興味深い。
もっとも、これは彼らが彼らの土俵で戦うための方法であり、テレビが成熟市場になったからといって、これまでAVの技術・ノウハウを蓄積してきた日本メーカーが、その位置まで行って戦う必要はない。が、テレビという商品のあり方を考え直す議論の種として、なかなか興味深く感じた。
では、これらの欧州テレビブランドに対して、日本のテレビメーカーはどういう方向へと舵を切り、歩もうとしているのか。今回のコラムで示した視点を引き継いだうえで、次回は国内メーカーのテレビについて再び考えてみることにしたい。