
ワタシはどのモデル/構成を選べば幸せ?:
2013年にDraft規格に対応することで製品化されていた無線LANの新規格「IEEE802.11ac」(以下、11acと略)。2014年1月に「IEEE802.11ac-2013」として正式認証され、Draft規格に準じて発売されていた製品の多くが晴れて正式な802.11ac対応製品として利用できるようになった。
【写真で見る:事例別「802.11acホームルータ」導入ガイド(前編)】
この流れととともに、据え置き型の無線LANルータ製品に加え、クライアント側(PCやスマートフォン、タブレット)にも11ac対応(モジュールを内蔵)化がグッと進んでいる。PCにおいては、インテル製内蔵無線LANモジュール「Dual Band Wireless-AC 7260」(2ストリーム通信対応/最大867Mbps)を中心に2014年発売の新モデルはミドルクラスのモデルも11ac対応が進んでいる。スマートフォン/タブレットにおいてもQualcommの「SnapDragon 800」シリーズが11acを標準でサポートし、同じく11ac内蔵モデルがぞくぞく増えてきた。単体の11ac対応(当時はDraft)の無線LAN機器/ホームルータが発売されてから約1年、11acはいよいよ普及の段階に入ったといえる。
改めてIEEE802.11acとは何か。2014年1月に正式策定された5GHz帯を使用する無線LANの新規格で、理論値最大約7Gbpsを実現する高速さが特長。チャンネルボンディングによる周波数帯域の拡大(最大160MHz幅)、通信の多重化(最大8×8 MIMO)、変調方式の多値化(256QAM)、フレームアグリゲーション(隣り合うチャンネル/送信データを束ね、フレーム単位で一度に送れるデータ数を増やす手法)などにより高速化を実現する。
PCで、スマホで、タブレットで、AV機器で──。無線LANの活用シーンは人それぞれだが、ラインアップがかなり増えてきた2014年3月現在、「ワタシにはどれが向いているか」を判断するのも少し難しくなってきている。
今回は、ホームルータ(親機)としてスマホ向けの低価格1ストリームモデルから最速の3ストリーム対応モデル、AV機器向けのイーサネットコンバータモデル、電波が届きにくい家庭で活躍する無線LAN中継機能付きモデル、USB子機、小型のホテルルータ、LTE対応ポータブルルータなど、ユーザーの11ac対応化をフルカバーする製品をラインアップするNECアクセステクニカ「Atermシリーズ」を軸に、利用シーン別に推奨モデルと構成、そして実パフォーマンスをチェックしていこう。
●【導入事例 1】家族みんなが、それぞれPC、スマートフォン、タブレットを使う場合
昨今は、家族みんながそれぞれノートPC、タブレット、スマートフォンを使っている場合もめずらしくない。プライベートのノートPC+無線LANの利用はおそらくあたり前としつつ、LTE対応のスマートフォンも月間の通信量に上限があるので、自宅でぞんぶんに使うには無線LAN接続が必須だ。
そんな無線LAN接続中心の家庭に勧めたいモデルは「AtermWF1200HP」だ。11ac対応無線LANルータとしてはミドルクラスに位置し、11acは2ストリームの最大867Mbps通信に対応する。もちろんこれまでの2.4GHz帯802.11b/g/n、5GHz帯802.11a/nも併用でき、こちらは最大300Mbpsで通信できる。
11ac内蔵の新PCやスマホはもちろん、これまでのPCやスマホでも使えるのがポイントだ。これから無線LANを導入する人はもちろん、すでに無線LANを導入済みという人も、高速な11acへステップアップしつつ、5GHz帯と2.4GHz帯を使い分けることで、より快適な無線LAN環境を整えられる。
LAN区間が高速になると例えば何が便利になるか。昨今はPCとスマートフォン間での音楽や動画の転送(同期)作業にも無線接続で行うことが主流になりつつある。通常、PCとスマートフォンはUSBケーブルで有線接続して同期するが、有線接続はケーブルを用意して、つないで……という作業がとても面倒。無線接続で済むならばグッとスマートになる。
ただ、無線通信の速度が遅いとそれだけ時間が余計にかかる。ここがこれまでの2.4GHz帯無線LANの弱点だった。無線LANルータが2.4GHz帯専用だと、PCもスマートフォンも同じ周波数帯を使うので実速度が落ちてしまうこと、そしてスマートフォン単体の無線LAN通信速度もあまり高速でない(例えば最大150Mbpsほどだった)ことが重なって、結果として遅いということになってしまっていたわけだ。
家庭用無線LANルータは原理的に1度に1つの無線LAN機器としか通信できない仕様のため、2台の無線LAN機器間で通信すると、実通信速度は無線LAN区間で得られる通信速度の半分になる。特にスマートフォンは小型ボディゆえ物理的なサイズ(複数アンテナの実装など)の都合で、802.11n(規格上の最大速度は最大600Mbps)対応でも最大150Mbpsほどに抑えた仕様となっていることが多かった(PCはサイズに比較的余裕があるので、複数のアンテナを内蔵した802.11nで最大300Mbps対応のモデルが一般的だった)。
そこで802.11ac化だ。対応で5GHz帯(11ac)と2.4GHz(11nなど)で同時通信できるWF1200HPを導入すると、802.11ac対応の新スマートフォンなら通信速度を明確に高速化でき、PCとスマートフォンで異なる周波数帯の電波を使うよう切り分ける工夫で、両方の通信速度を向上させることができるようになる。
では実際にどのくらい速くなるか。Windows 7搭載のノートPCとAndroidスマートフォンを使い、音楽データの無線同期(「iSyncr」アプリを使用)を試してみよう。
サンプルは全40曲で、ファイルサイズは170Mバイトほど。ルータであるAtermWF1200HPをハブに、11ac(最大876Mbps)対応USB子機「AtermWL900U」経由で接続したWindows 7ノートPCから、2.4GHz帯の802.11nで最大150Mbps、5GHz帯の802.11acで最大433Mbpsに対応するスマートフォン「Nexus 5」へ転送する時間を計測した。
パターン1はこれまでの環境である2.4GHz帯11n同士の接続。作業時間は約70秒だったが、これをNexus 5のみ、およびどちらも11acで接続するパターン2およびパターン5では、2倍以上高速な30秒ほどに短縮される。パターン2は電波帯域を食い合わない方法のため高速さが発揮されるのだが、802.11ac接続同士で5GHz帯を共有するスタイルとなるパターン4も僅差だったことに注目したい。あくまで一例ではあるが、使用できるチャンネル数が2.4GHz帯より多い(利用者/クライアントが増えても混雑影響を受けにくい)5GHz帯を使用する11acであれば、こちらを積極的に使うだけでより快適に無線LANを利用できるという意味でもある。
なおパターン3がやや振るわないのは、混雑傾向にある2.4GHz帯でNexus 5は最大150Mbpsの倍速モード(40MHz幅)で接続できないことが多いためと考えられる。今回の測定場所(筆者自宅)も排除のしようがない公衆無線LANサービスの電波がいくつか届いてしまう環境で、Nexus 5は20MHz幅の65~72Mbpsでしかリンクできなかった。これを11acにすると(すいているので)しっかり433Mbpsでリンクするので、こういった部分でも効果があることが分かった。
まだ802.11ac対応機器を持っていない人は多いかもしれない。ただ、今後ノートPCやスマートフォンを買い換えると802.11ac対応となっている可能性が高い。これまでの機器では2.4GHz帯、新しい機器では5GHz帯を使い分けることで、無線LAN環境をより快適に使えるようになる。家族のインターネット接続はすべて無線LAN、そんな使い方にぴったりな11ac“ファースト”ホームルータがAtermWF1200HPと言える。
●【導入事例 2】ワタシはハイクラスPCユーザー。なにより「速度/レスポンス」を求めたい
インターネット通信をかなりヘビーに使うカテゴリの1つに、PCゲームあるいはゲーム専用機、そしてストリーミング動画/動画配信サービスがある。
一応これらはWAN側(自宅の光ファイバ1ー回線など)の通信速度も速くなければならないが、その速度が無線LAN側でボトルネックになってはいけない。動画配信サービスはもちろん、常に通信し続けるリアルタイム対戦ゲーム、さらに最新データをどんどんインターネットから読み出しながら進行するオンラインゲームも少なくはないし、複数人がパーティとなって対戦するオンラインRPGなども結構なデータ通信量が発生する。なにより通信速度の絶対値とレスポンス(PING値)が重要だ。
このような(自分自身を含む)ヘビーユーザーがいる家庭には、3ストリーム(最大1.3Gbps)対応の最上位モデル「AtermWG1800HP」を勧めたい。
AtermWG1800HPは、2014年3月時点で最速スペックとなる3ストリーム(3×3 MIMO)での11ac通信をサポートし、さらにこれまでの2.4GHz帯/5GHz帯802.11a/b/g/n(最大450Mbps)も併用可能。4つの有線LANポートもすべてギガビット対応という現時点全部入りという仕様だ。
加えて、縦置き、横置き、壁掛けが自在に行え、他メーカーの11acルータと比べ、設置場所を選ばない小型ボディであるのも良好なポイントの1つだ。世界最小クラスとうたう高性能な「μSRアンテナ」と基板上からの電磁波ノイズを遮断する「μEBG」技術を導入することで、高い送受信性能と小型化を両立している。
PCにしてもゲーム専用機にしても、11ac無線LANを内蔵する機器をすでに持っている人は少ないかもしれない。いまあるPC(ノートPCはもちろん、デスクトップPCも含む)を手軽に11ac化したいなら、2ストリーム(867Mbps)対応のUSB 3.0子機「AtermWL900U」も一緒に導入するとよいだろう。
ではこの組み合わせは、やはり実速度がどれだけ向上するかがポイントだろう。親機をAtermWG1800HPに、隣接した別の部屋にデスクトップPC+AtermWL900Uを設置し、LANスループット計測ソフト「LAN Speed Test」でスループットを測定した。
基本となるパターン1は、下り286Mbps/上り201Mbpsを記録。これまで最大300Mbps対応の11n接続で80Mbpsにも届かなかった状況から、一気に約3.6倍もの速度が出るようになった。
参考までにWL900UをUSB 2.0接続で使用してみたところ(パターン2)、速度は175Mbpsほどに落ちた。こちらはUSB 2.0のインタフェース速度が若干ボトルネックになるようなので少し気を付けたい(USB 2.0しかないPCで使うなら仕方ないが)。それでも一般的に最大100Mbpsとなる光ファイバーのインターネット接続サービスを完全に使い切れる実効速度といえる。
これまでの接続方法であるパターン4では、どうチャネルを変更・調整しても筆者自宅の環境は帯域に空きがなく、デュアルチャネル(40MHz幅)では接続できない状況となる。リンク速度は144Mbps(シングルチャネル、2ストリーム)、速度も下り最大78Mbps程度にとどまった。
(ドライバの都合で)USB子機を使用できない家庭用据え置きゲーム機の11ac化は、有線LANポートを持つ機器ならOKとなる「AtermW500P」を導入してみてはいかがだろう。
AtermW500Pは、ホテルなどの有線LANインターネット環境を11ac無線LANで共有できるようにする“ホテルルータ”と呼ぶカテゴリの製品だが、有線LAN接続で有線LAN搭載機器(PCやゲーム機、AV機器など)と接続すると子機にもなり、クライアントを“11ac無線LAN対応”にできる応用方法がある。11acでの最大通信速度は433Mbps(1ストリーム)、有線LANが100BASE-T対応と仕様は控えめだが、USB電源で動作し、小さくじゃまにならないので、運用がかなり手軽なのがメリットだ。実速度(パターン3)は90Mbpsほどと、やはり11n接続の前環境より若干だが高速な結果が得られた。
なお、親機には2ストリーム(最大867Mbps)対応の中位モデル「AtermWG1400HP」もある。2014年3月現在、11ac内蔵の子機(PCやタブレットなどのクライアント)側の対応は2ストリームまでにとどまるので、2ストリーム11ac+ギガビット有線LAN仕様の本機も現時点のパフォーマンスは同等ととらえられる。念のため、上記をAtermWG1400HPに差し替えてテストしたが、実通信速度はほぼ同じだった。
では、上位のAtermWG1800HPと中位のAtermWG1400HP、どちらを選ぶとよいか。
この導入事例で考慮すると、2014年3月現在、PCへの内蔵化が進む11ac無線LANモジュールも2ストリーム(2x2 MIMO)/最大867Mbps対応までが主流であり、スマートフォン/タブレットも1ストリーム対応止まりということで、どのモデルもパフォーマンスに不足はない。コストパフォーマンスを重視するならAtermWG1400HPが向いている。
一方、ブロードバンドルータ(親機)の買い換えスパン(3年~5年ほど)を考えると、子機側の性能が向上する可能性、そしてより高速な無線通信を求める使い方がもっと望まれるようになるはずだ。数年後も考慮するなら、現時点で最上位の性能を持つAtermWG1800HPがよいと思う。
11n世代も上位志向/BTOカスタマイズの構成例などにおいてノートPCの内蔵モジュールにも3ストリーム(3x3 MIMO)対応モデルが存在したし、チップセットベースではすでに3ストリーム対応の802.11ac対応製品もリリースされている。また、液晶一体型モデルを中心にデスクトップPC(あるいは据え置き型のAV機器やゲーム機)にも無線LANの搭載があたり前になってきている。この事情も含めて今後のPC買い換えを考慮した選択とするのもいいだろう。
もう1つ、AtermWG1800HPは、AtermWG1400HPがサポートしない無線LAN中継機能も備えるのがポイントの1つ。将来、無線LANのシステムを入れ替えたり、新築・引っ越しなどで自宅が広くなった時に備えて応用できる幅が広いメリットもある。
●【導入事例 3】テレビやレコーダーも含めて11ac化したい
いまや、家電も高速な無線LAN化が進んでいる。身近なところではリビングルームのテレビとレコーダー、据え置き型ゲーム機などがある。AV機器はインターネットを使用する動画配信サービスも利用でき、Blu-rayレコーダーも録画した番組を離れた個々の部屋でも楽しめるネットワーク配信機能が備わっている。
一方、家電の無線LAN対応が進んだのはここ1~2年ほどで、内蔵しているならともかく、専用のUSB無線LANアダプタ(テレビ専用の無線LAN子機など)はPC周辺機器と比べると意外に高額なので導入を踏みとどまっている人も少なくないだろう。
さらに「ハイビジョン番組のネットワーク配信」はPC利用以上に無線通信速度と安定性のパフォーマンスを要する。速度が遅いと、映像が途切れてしまう、配信側が“遅い”と判断して低画質に調整してしまい画質がいまひとつになるといった使い勝手を損ねる弊害がある。試してみたが、ちょっと遅くて使いものにならない……と思ったことがある人、有線LANなら速いことは知っているがケーブルをはわすのは無理がある……とあきらめていた人もいるだろう。
参考までに、MPEG-2録画番組は25Mbpsほど、AVC録画番組は8Mbpsほどのビットレートである。最低でもこの速度を「下回らない」ことが求められ、快適に楽しむにはこの2倍の速度を維持するのが目安。例えばnasneなどは同時に2つの録画番組をネットワーク配信できるが、ふたりが同時に使うのであればさらに2倍の速度が必要と考えてほしい。25×2×2で100Mbpsという感じか。
この導入事例にずばり向くモデルは「AtermWG1800HPイーサネットコンバータモデル」だ。前述したAtermWG1800HPを2台セットにしたパッケージで、1台を親機に、もう1台をリビングルームのテレビ台付近に設置し、この区間を最大1.3Gbpsの11acで「無線化」できる。
ポイントは、テレビやBlu-rayレコーダー、CATV/スカパー!のチューナー、nasne、PlayStation 3/4など、有線LANが付いているAV機器/ゲーム機をまとめて無線対応にできること。有線LANさえ付いていれば大丈夫だ。AtermWG1800HPは最大5台(子機側は、WANポートもLANポートとして使える)接続できるギガビット有線LANポートを実装している。
この2台のAtermWG1800HPは、購入時点で802.11acで接続するようあらかじめ設定済みとなっているのが便利。また、本機はギガビット対応のLANハブとしてももちろん機能するので、リビングルームの子機に接続したAV機器間の通信も高速に行える。例えば複数台のBlu-rayレコーダー間で行うネットワークダビングする作業は、(1台のルータで運用する)親機経由で無線通信するよりたいていの場合は大幅に高速だ(他の機器で使うための無線LANの帯域を消費しないという副次的な効果もある)。こちら、すでに無線LAN内蔵のテレビやレコーダーを使っているとしても、あえて有線LANを活用して本機でまとめて無線LAN化するメリットが十分ある。
では2台のAtermWG1800HPを使用した無線LAN区間の実速度はどのくらいか。ペアリング済みのAtermWG1800HPへ、それぞれギガビット有線LANで接続したPCで参考速度を計ってみた。
結果は下り479Mbps、上りで484Mbps。仮に5台のAV機器を使うとしても、1台あたり約100Mbpsの速度を確保できる計算だ。このポテンシャルは、通信距離が離れても相対的に速度を維持できる性能を持っていることを示す。移動距離で約20メートル離れた別の部屋へ一方を移しても下り340Mbps、上り344Mbpsを記録し、同じく5台のAV機器すべてがハイビジョン番組を配信したとしてもまったく余裕な実速度を維持していた。
もちろんAtermWG1800HPイーサネットコンバータモデルは、前述した【導入事例 2】の利用シーンもカバーする。親機とするAtermWG1800HPには、AV機器用のAtermWG1800HP子機に加え、プライベートルームのPC、NAS、スマートフォン、タブレット、携帯ゲーム機などを同様に接続し、11ac(およびこれまでの2.4GHz帯を含む11b/g/n)で通信できる。自宅の無線LAN機器を“ほぼすべてまとめて”接続するには、現時点最良と思うオールマイティな選択肢と思う。(後編に続く)
[坪山博貴(撮影:矢野渉),ITmedia]