
東京のヤマダ電機LABI渋谷店において3日、PayPal Hereによる「ペイパルチェックイン支払」の実演デモを兼ねた記者発表会が行われた。
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発表会冒頭、日本PayPal 代表取締役 兼 CEO 多田彰氏が「ヤマダ電機さんとは親会社であるソフトバンクとの縁で、PayPal Hereによるチェックイン支払を導入することになりました。ヤマダ電機さんは最先端の商品を扱う店舗なのでこの新しいサービスの戦略やイメージとも一致します」と挨拶した。
PayPal Hereは、専用アプリをインストールしたスマートフォン(タブレット)を利用して、店舗内のどこでもその場で決済ができるようにする。利用者は店舗に入ると自分のアプリを起動し「チェックイン」をする。店舗側は利用者の来店(チェックイン)をタブレット等の店員端末で確認できる。購入時は、店員端末の画面を確認しながら支払処理(画面をタップ)をアプリ上で行う。レジに並んだり、現金での支払い、カードでの支払(サインや暗証番号)などの手続きなしで、商品を購入することができる。
顧客側のアプリは事前にダウンロードして、PayPalアカウントを作成しておく。このとき名前や顔写真も登録することで、店舗側は来店した顧客の名前、顔を把握、確認できる。そのほかの登録情報は、住所、連絡先(電話番号)、メールアドレス、ウォレットと呼ばれるカード情報(8枚まで登録可能。現状はVISA、Master、American Expressに対応)だ。
実際の手順を説明するため、デモも行われた。まず、利用者は、店舗周辺、または店舗内でアプリを起動し、ログインを行う。この時点で、GPS機能により周辺でPayPal Here(またはPayPal)が利用できる店舗のリストも表示される。目的の店でチェックインをすると、来店したことが店舗側に伝わる。店員とのやりとりで購入を決定したら、店舗側のアプリ画面で金額を入力するか内蔵カメラでバーコードなどを読み取る。OKであれば支払ボタンをタップする。ここからは、PayPalアカウントでのオンラインでのカード決済処理になり、メールで明細が送られてくる。あとは、商品を梱包してもらえば買い物終了となる。
やってみると非常に簡単に支払が終わる。財布を出す必要もなければカードの読み取りやサイン、暗証番号の入力もない。購入金額の入力と確認だけだ。しかし、このシステムは店舗のPOSと直接リンクしているわけではない。カード決済処理の部分をPayPalのアプリで行っているだけなので、店舗としては自社のPOSへの取引の入力処理は必要である。POS処理を梱包の際に行うか、棚の前で別の端末やアプリで行うかは、店舗ごとに変わってくるだろう。
LABI渋谷店では、3日よりPayPal Hereによる支払が可能になるが、当面は、顧客の反応を見たりするテスト期間として運用するという。しばらくはレジに専用カウンターを設けてそこでの支払い処理となるそうだ。このカウンターではPayPal Hereの登録などの手続きもサポートしてくれる。
PayPal Hereの狙いは、単にリアル店舗が顧客をオンラインからの導線を作るO2Oではないという。そう語るのは、PayPal Pte. Ltd.東京支店 コミュニケーションズ部 部長 杉江知彦氏だ。杉江氏は、
「PayPalは、EC決済に特化した企業ではありません。たとえば、世界中のEC市場は1兆ドルといわれていますが、リアル店舗の市場は10兆ドルです。人々が物を買うという点について、オンラインやリアルといった区別に意味はないと思っています。PayPalではコネクテッドコマースと呼んでいますが、ショッピングに対して新しいサービスや体験を提供することが重要と考えています。日本ではおサイフケータイが普及していますが、PayPal HereはNFCは必要ありません。だれでも、どんなデバイスでも対応できるので、利用の自由度は高いといえます」
と、PayPalの戦略とPayPal Hereの特長を説明してくれた。なお、PayPal HereアプリはiOS 7以上、Android 2.3以上に対応している。店舗側のアプリもPayPalの企業アカウントがとれれば、個人でも利用できるそうだ。
PayPal Hereが向いている店舗や業態は、コーヒーショップや飲食店とのこと。少額決済であり、支払での利便性をアピールしやすい。ヤマダ電機との協業は、市場での反応を見ながら最適なサービス方法も調査することと、PayPal Hereの便利さをアピールすることが第一の目的であり、売上などの数値目標はとりあえず設定していないそうだ。ヤマダ電機は、サービス向上につながるのならと前向きに評価してくれたという。
ところで、支払が簡単になるのはうれしいが、昨今、この手のサービスはセキュリティやプライバシー情報の扱いについての懸念も取り沙汰されている。杉江氏によれば、「決済情報はPayPal側で処理されるので、店舗側とカード番号などを共有しているわけではありません。顧客側アプリも起動にログインパスワードが必要なので、落としたり盗難などで悪用される可能性は抑えられます」とのことだ。
つまり、アプリ登録時に入力するカード情報などは、PayPalのサーバーに管理されるだけで、店舗側のアプリは顔写真と名前と決済金額だけを扱う。どのカードを使ったかの情報を店舗側が直接知ることはないとのことだ。これらの情報を店舗が把握するには、従来のPOSレジやポイントカード処理などで把握する必要があるだろう。むろんこれをもってパーソナルデータは安全とはいいきれないが、アカウント情報の管理、履歴データ等の無断利用(交換・販売)がなければ、オンラインでカード決済するのと危険度は大きく変わらないともいえる。
パーソナルデータの扱いには慎重を期してほしいが、うまく運用されれば買い物は確実に便利になるだろう。すでに、英国のアパレルショップでは、顧客が気に入った商品をそのまま自分でタグをスマートフォンのカメラで読み取り、購入・決済し、カウンターで梱包や包装だけしてもらい店を出る、という取り組みも行われているという。コーヒーショップなどでは、店に向かいながらチェックインして注文、支払まで行い、店舗では出来上がった飲み物を受け取り、飲み終わったらそのまま店を出るということも可能になる。
オンライン、リアルともにショッピングや消費のスタイルは変わりつつあるようだ。