
メールの内容は簡潔に
メールやSNS(特に報告の場面ではTwitterやLINE)での報告は、規則などで義務付けられている場合を除き、極力会話を優先してほしい。情報セキュリティの観点ではメールの情報量を1とするなら、電話は数千、会話は数万~数十万と、桁違いの情報量になる。その時の声の感じや口調、訛りの出し方、抑揚、トーン、声量、音質、顔付き、しぐさ、表情、手や足の挙動、頭の動き、クセ(爪を噛む、貧乏ゆすり、額に手をやる、など)、身振り手振り、舌の出し方、眼の動き、眉の動向パターン、首の動かし方、話のスピード――など様々な要素がある。
筆者はこれらについて情報量を数値化した。それぞれ加算していくとすると、メールの数万~数十万倍(比較の方法や領域の範囲によって大きく異なるが)となった。同じ言葉でも「文字の固まり」のメールと、面談で相手が捉える雰囲気や前後の会話の状況なども総合したものでは真逆の印象になるケースが多々ある。このことは中高年の方なら経験をお持ちだろう。
いまや、隣の席にいる上司や指導担当者への報告ですらメールで済ます新入社員もいる。証拠としてメールや作業日誌に残したいという気持ちもあるようだが、きちんと相手の顔を見てコミュニケーションをとることは基本だ。特に営業が絡むものなら、雑談から思いがけない売上につながるケースも多いので、疎かにしてはいけない。人類はまだメールやSNSに慣れてはいないのだ。
CCとBCCの重要性を認識する
学生時代にその意味を知っていても、余り気に留めなかった点ではないだろうか。ビジネスのメールでCCやBCCの使い方をミスすると、取り返しのつかない事になってしまう。筆者もミスした新入社員をこれまで数多く見ているので、今年の新入社員もぜひ自覚を持ってほしい。
本来、CCやBCCは同じ内容のメールを複数の相手へ同時に送信できる効率性のためにある。今では、CCはメールを受け取った人が、そのメールをほかに誰が受け取っているのか分かるために使われている。一方、BCCはそのことを分からないようにしたものだ。
ビジネスではこの差が大きい。例えば、CCだけなら自分がこの仲間(メールの内容を共有する集団)であるということを送信者以外の全員に知れてしまう。また、第三者ではなく当事者であるということを知らしめるという宣言にも等しい。
メールアドレスを原則非公開としていても、CCで送付した人たちには分かってしまう。状況によってはそれだけで契約を取れなかったり、今後の動きに大きな制約をもたらす事にもなりかねない。CCを使うということは、それほど重要な内容である場合が少なくない。もしメールでCCを使うなら、事前に近くの先輩社員に確認するといい。原始的な方法だが、これにより責任転嫁もできるので必ず実践してほしい。
電話照会に注意する
新入社員が一人で留守番する時に、最も注意すべきなのが情報の漏えいだ。対応メモをきちんと残すことや、外出している先輩に伝言することよりも、はるかに重要な点である。
実際に筆者が遭遇した例では、警察署を名乗る人物からの電話で、ある顧客の個人情報を伝えてしまったケースがあった。本人は「警察からの電話だからやむを得ない」と自己判断し、その場で即答してしまった。案の定、その警察を名乗る人間は実在しなかった。この新入社員は真っ青になり、事後対応に追われた。
後日その会社に聞いてみると、幸いにも大事にならなかったが、その新入社員は既に辞めていた。昨年みられた事件では、市役所の職員から(本来教えてはいけない個人情報を)うまく聞き出し、殺人事件にまで発展している。決して個人情報を甘くみてはいけない。個人情報の取り扱いは、「生きるか死ぬか」という問題にもつながりなりかねないのだ。
お昼休みの注意事項
1.昼休みにインターネットの私的利用を許している企業は、中小企業を中心に比較的多い。しかし、ログ監視をされていることを理解する。アダルトサイトなどをいつも利用しているなら、極めてまずい。「認められている」から何でもOKではない。社会の常識をよく見極めて行動すること。
2.例えば、SNSなどに自分の会社の悪口が投稿され、つい正義感から匿名で反論を投稿したとする。しかし、第三者はあなたが会社の関係者であることをすぐに見破る。こうして炎上につながったケースを筆者は目撃したことがある。くれぐれも勝手に行動してはいけない。必ず上司に情報を提供し、判断を仰ぐのが会社員として正しい行為であることを心得てほしい。
3.制服を貸与されている企業なら、必要時以外はその制服や作業服でプライベートな行動をしないように努める。企業によっては、外出時に私服に着替えるルールを設けているところが多いものの、実態としてはなかなかうまく守られていないケースが散見される。昼食の時間が短いからといって制服のまま外出し、思わぬトラブルに巻き込まれる新入社員が時折見られるので注意すること。
4.昼休みに、ついつい貸与されたスマホや「BYOD(私物の業務利用)」に指定された端末でゲームアプリを遊んだり、認められていないアプリをインストールしたりしないようにする。特に無料ゲームアプリの多くは、アドレス帳などの個人情報を外部へ送信していることがすくなくない。後悔しても「時既に遅し」という結果を招く恐れもあるので、十分に注意してほしい。ウイルス対策アプリも過信してはいけない。特にAndroidの場合は、その構造からPCと同程度の機能はまず期待できない。最も重要なのは「不審サイトにいかない」「怪しいメールは開かない」ことだ。
FAX送信はチェックにチェックを重ねる
FAX番号をうっかり押し間違え、全く違う企業に送信してしまうというケースがかなりある。くれぐれも注意してほしい。それによって情報漏えいが発生し、マスコミ騒ぎにもなりかねない。そうなると謝罪、時には損害賠償まで請求され、当事者の責任問題になる。くれぐれも安易に作業せず、常にチェックにチェックを重ねてほしい。
OA端末を勝手に装飾する
これは特に女性に多い。画面の周囲にデコレーションを張り付けたり、机上を造花で飾ったりする行為は、目立たない程度ならOKという企業が多い。
以前に、それがエスカレートしてPCの「壁紙」を勝手に変更(PC雑誌の付録の壁紙DVDから借用)した新入社員がいた。彼女としては「プログラムでもないし、単純に壁紙だから綺麗にしたかった」という発想だった。しかし、社内の業務アプリの1つが正常に起動しなくなってしまった。
筆者が調べてみると、壁紙で使用される某「dll」(拡張子がDLL)が変更されていた。その業務も同じdllを参照して起動していたので、壁紙をインストールした時にdllが強制変更され、結果としてアプリ業務が動かなくなった。自分のスキルがどんなに優秀だと思っていても、想定外の事象は起こり得る。絶対に勝手な行動は慎むこと。その後、彼女は訓告処分になり、最初の賞与を貰う日までに退職していた。
便利ツールの利用
学生時代にExcelのマクロ作りが上手だった新入社員が、配属先で得意気にマクロを作った。効率化する目的で周囲の新入社員たちからも喜ばれていたという。ところが数カ月後、先輩社員に「このマクロを使うと業務が楽になりますよ」と教えたところ、大いに叱られた。
実は、この会社でOfficeのバージョンアップによる影響を事前調査した結果、「使ってはいけないマクロ」の1つに新入社員の自慢していたマクロがあったのだ。「バージョンアップすると計算結果が違って表示されてしまう要注意マクロ」として全社で廃止されていた。
会社に貢献したいという気持ちは大切だが、勇み足になってはいけない。常に上司や先輩へ相談してから行動すること。日本企業ならではの「報・連・相(報告・連絡・相談)」は、国際的には批判が多いものの、こうしたシーンを含めて大切な行動になっている。新入社員もぜひ身につけたいものである。
●萩原栄幸
日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。