
「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品選びまで、順序立てて解説する本連載。第2回は、UPSの選定で知っておくべき、容量の計算方法や給電方法の違いを紹介する。
【表:UPSに接続する機器の消費電力例一覧、他の画像】
●UPSはどのように選ぶべきか
「無停電電源装置(UPS)」は、主に内蔵するバッテリーの容量によってラインアップが分かれている。これは要するに、接続する機器の消費電力が高いか低いかによって、異なる製品を取りそろえているわけだ。
実際には給電方式や出力波形の違いなど別の要素もあるわけだが、それらの違いはひとまず後回しにして、まずは必要な容量の測定方法についてざっと見ていこう。
UPSの選定にあたっては、まず最初に接続したい機器ごとの消費電力を書き出す。メーカーのWebサイトや製品の取扱説明書に消費電力(W、ワット)の表記があるはずなので、それをメモしていく。
例えば、左のような一覧表を作ってMicrosoft Excelなどで保管しておけば、将来的に機器の入れ替えがあった際にも再計算がしやすく、また法人で機器管理の担当を誰かに引き継ぐのも容易だ。
ちなみに、かつては消費電力(W)だけでなく皮相電力(VA、ボルトアンペア)という値も用いて計算するのが一般的だったが、メーカーのWebサイトや製品の取扱説明書では消費電力(W)のほうが確実に記されているので、そちらをベースに計算したほうが手軽だ。皮相電力(VA)が必要な場合は、消費電力(W)を0.6で割った値を用いるとよい。
消費電力は、PCなどでは「最大構成時60W、通常時20W」といった具合に2種類の値が表記されている場合がある。この場合は最大値で計算するのが正しい。またデスクトップPCのグラフィックスカードなど、後から増設した機器もかなりの電力を消費する場合があるので、忘れずに追加しておく。
これに加えて、バッテリーの劣化が進むとパフォーマンスが半分程度に落ちるので、それも考慮して「最大値×2」で計算するのが理想なのだが、そうするとコストが高くつきすぎる。せいぜい2割増し程度で計算しておき、後は寿命が来たら早期に交換するという考え方でよいだろう。
つまり、機器の消費電力の合計が300Wであれば、1.2倍で360W程度を見ておくわけだ。よくUPSの選び方で「計算した容量の1.2~1.3倍程度を見ておくべし」と書かれているのは、これが理由である。
●メーカー提供の計算ツールでピッタリのUPSを見つける
さて、消費電力の合計が算出できたら、接続した機器を駆動させる時間を決める。例えば「安全にシャットダウンするだけなので3分あればいい」という場合もあれば、「設備の点検による停電時も業務を止められないので1時間は必要」という場合もあるだろう。前者と後者では製品の価格帯がまったく変わってくるわけだが、ひとまず目安となる時間を決める。
この2つのデータがそろえば、UPSのバッテリー容量と照らし合わせて適した機種を探せるようになる。
もっとも、この2つのデータがそろったところで、メーカーのWebサイトやカタログから条件に合致した製品を自力で見つけるのは大変だ。計算が合っているかどうか不安という人も多いだろう。
こうした場合に役立つのが、UPSメーカーがWebサイト上に用意している計算ツールだ。これを使えば、消費電力の合計やバックアップ時間を入力していくことで、条件に合致したUPSを手軽に見つけられる。
例えばAPCブランドでUPSを販売しているシュナイダーエレクトリックは、オンラインショップの「Shop APC」で「UPS選定サポート」なる計算ツールを提供している。またオムロンも同様に、自社サイト上で「UPS選定ツール」というページを用意しており、手軽に利用できる。電圧に関しては100V(ボルト)で計算するとよい。
●給電方式と出力波形を正しく選ぶ
ここまで紹介した手順で目的のUPSはおおむね選定できるはずだが、あと2つの条件を追加すれば、さらに正確に候補となる機種を絞り込める。その条件とは「給電方式(運転方式)」と「出力波形」だ。
UPSの給電方式には「常時商用」「ラインインタラクティブ」「常時インバーター」の3種類があり、さらに出力波形は「正弦波(せいげんは)」と「矩形波(くけいは)」の2種類に分かれる。この方式の多さ、用語の耳慣れなさがUPSを選びにくくしている一因なのは間違いない。技術的な話は下の図をご覧いただくとして、ここでは選び方を中心に説明する。
まず給電方式だが、3つの選択肢のうち、常時インバーター方式はデータセンターなどで使われる大規模な方式なので、本連載でターゲットとするSOHOや中小企業の環境ではひとまず除外する。残る選択肢は2つだが、停電時のバックアップ時間確保に加えて電圧を安定させる機能が必要ならばラインインタラクティブ、特に必要がなく停電への備えだけでよければ常時商用というのが結論だ。価格については、プラスアルファの機能があることからも明らかだが、ラインインタラクティブのほうが高価だ。
出力波形は正弦波と矩形波のどちらを選ぶかだが、現在多くのPCやNASが採用しているPFC(力率改善)回路搭載の電源(PFC電源)は矩形波に対応しないとされるので、PCやNASを接続する場合は正弦波を選ぶのが望ましい。実際には矩形波でも問題なく動作するケースも多いのだが、いかんせん実機で検証しない限り分からないので、メーカー側としては非対応とせざるを得ない事情がある。
買う側としても、せっかく容量の計算をしてまで購入しておきながら、停電時にUPS駆動に切り替わった瞬間にシャットダウンされてしまうのでは意味がない。あらかじめ実機での動作確認が取れていれば別だが、機器構成の中にPCやNASが含まれている場合は正弦波の製品を選ぶようにしよう。ちなみにラインインタラクティブはすべて正弦波なので、正弦波か矩形波かを考慮する必要はない。
●「UPS連動機能」の対応にも要注意
ところで、UPSの選び方でもう1つ気を付けなくてはいけないのが、接続する機器が「UPS連動機能」を持っている場合、この機能に対応する製品としない製品があることだ。
例えばNASの中には、UPSと連動して自動的にシャットダウンする機能を備えた製品があるが、これは動作確認がきちんととれた製品でしか使えない。
こうしたケースでは、消費電力などの条件が合致していても、UPS連動機能については利用できないことになる。連動機能が使えなくても停電中に電力は供給できるので、UPS本来の機能が使えないわけではないのだが、せっかくインテリジェントな機能を備えているだけにもったいない。
特にNASについては、前述のツールで適合するUPSが見つかったら、UPS連携機能がきちんと動作するかどうか、NASメーカーのサイトで対応情報をチェックするとよいだろう。機器によっては、追加で接続ケーブルを用意しなくてはいけない場合もあるので、あらかじめ確認しておいたほうが後で慌てずに済む。
次回は、具体的なオフィスの環境を挙げ、今回紹介した計算ツールでUPSを選定する手順を紹介しよう。
[山口真弘,ITmedia]