
【ソチ=佐々木正明】東日本大震災で津波に襲われた被災地出身の女子高生、阿部友里香がソチ・パラリンピックで大活躍を見せている。2種目の出場となった10日のノルディックスキー距離女子15キロクラシカル立位で8位入賞を果たし「今ある力を出し切れた」と表情には充実感が漂った。左腕のまひ、津波被害という逆境を乗り越え、世界で戦う姿は被災地にも希望を与えている。
1種目のバイアスロン競技13位から中1日で臨んだ10日の女子15キロクラシカル立位。右腕でストックを突き、大きなストライドで懸命に前を追った。ゴールと同時に倒れ込み、目標の入賞。それでも一時は7位に浮上しながら、順位を落としただけに「追い抜くための課題も見つかった」と冷静に振り返った。
生まれたときの事故で左腕が不自由になった阿部がスキーに出合ったのは中学2年の冬。2010年バンクーバー大会をテレビで見たことだった。中学ではバレーボールに打ち込んでいたが、同じく障害を持つ選手が活躍している姿に衝撃を受けた。1年後、親元を離れ、強豪スキー部のある盛岡南高校に進学した。そして競技を始めて3年で日本代表入りを果たした。
震災に見舞われたのは中学卒業の目前だった。岩手県山田町の自宅は津波後に起きた火災にのまれて全焼。自らは高台にあった校舎にいて難を逃れた。家族は全員が無事だったが、地元の多くの人々が波にのまれた。平穏が奪われた15歳の少女はスキーに打ち込むことで自らを支えてきた。だから壮行会では「故郷に元気と勇気を届けられるように頑張るのが務め」と訴えた。8位入賞は自らに課したハードルでもあった。
それでもまだ18歳の高校生。「親戚(しんせき)はウニ取りの漁師。帰ったら、おいしいウニとイクラを食べたい」。競技後には、ちゃめっ気たっぷりに笑った。