
2012年の全国人民代表大会(全人代)でPM2.5の危険性を主張した呼吸器疾患の専門家、鐘南山氏が6日、地元の広東省では当局が大気汚染低減に真剣に取り組んでおり、5年以内に眼に見える効果を出せる可能性があると発言した。鐘氏は2009年に新型インフルエンザが流行した際、当局による「死者数ごまかしの手口」を暴露するなどで、「良心と信念にもとづいて発言する気骨の専門家」として信頼されており、同発言に改めて注目が集まった。中国新聞社が報じた。
鐘氏は全人代の代表(議員)も務めている。2012年3月の全人代では「人の健康が存在しなければ、GDPをさらに増やしても何の役にも立たない」などと発言して注目を集めた。当時は、鐘氏を批判する人も多かったという。
鐘氏は2013年に汚染問題に関連して「政府が民生を重視することは、GDPを重視することより大切だ」とする意見書を提出した。
鐘氏は6日、13年に提出した意見書について、政府側が回答し、措置を講じていると説明し、「私は全人代代表になって7年になるが、今までに提出したすべての意見書の中で最も満足している」と述べた。
広東省政府は珠江デルタ地域でPM2.5の平均濃度を2017年までに低減するとの具体的目標値などを設定した。鐘氏は「もしも実現できればすばらしいことだ。英国でも米国でも、大気汚染の緩和に20年を要した。広東省が決意通りに5年間で成果をあげることは、当然ながら容易ではない」と述べた上で、「国外の専門家はみな、信じていない。しかし私は可能性があると思う。中国は挙国体制で、大事業を推進し、奇跡を起こすことができる!」と強調した。
鐘氏は、PM2.5を減らすために最も大きな障害は「研究不足であること」と指摘。汚染のメカニズムも危険性についても定説がない。ただしハルビン市(黒龍江省)での研究により、PM2.5の濃度が600-800によれば、児童の咳の発作は3%-9%、喘息(ぜんそく)発作は2倍になることが分かっており、極めて危害が大きいことは明らかという。
鐘氏は、「現在は、皆が政府を批判しているが、それは問題だ。大気汚染の問題では、すべての人が被害者であり、同時に加害者になりうる」と主張。自動車を利用したり炊事をするなどで、誰もが大気汚染の原因を作ることになりえることから、1人ひとりの責任感が必要との考えを示した。
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大気汚染については、中国国民の間に不安や当局不信が強まっていることから、中国共産党・政府も真剣な取り組みを見せはじめた。その点では鐘南山氏が現状を比較的高く評価していることは、理解できる。
ただし、広範囲にわたる環境汚染は国の産業や社会の構造を反映して発生するものだ。そのため、当初は「妙案」と思われた方策も挫折する場合がある。例えば中国では大気汚染の軽減を目的に、燃料を石炭からガスに転換しようとしたが、設備が整っていないために供給が需要に追いつかず、いったん見送られることになった。
改革開放が本格化してから20年あまり。長年にわたって形成された「汚染のメカニズム」を5年間で改善するのは、「極めて難しい」と言わざるをえない。鐘氏は過去との比較において当局の姿勢を「激励」する意味も込めて高く評価したと思われるが、今のところ2017年までに「顕著な成果」を出すことは「奇跡」と言わざるをえない。
鐘氏には、2003年のSARS(サーズ、新型肺炎)流行時、感染が拡大した時期に最前線で治療にあたり、各地の医療チームを指導したなどの経歴がある。2009年の新型インフルエンザ流行時には、一部地域で「疑わしい症状による死亡者が出た場合に死亡後のウイルスの検査を行わないという方法で、インフルエンザによる死者の数を減らしている」と、当局による「ごまかしの手法」を暴露した。(編集担当:如月隼人)